土合:セレブリティ広告の話でいえば、実はセレブ自身もブランドですよね?
足立:そう、彼らにとって自分以外のブランドの広告に出ることは、自分のブランドの価値を相対的に下げかねません。だから、有名セレブは地元のアメリカでは、基本、テレビCMに出ません。日本の広告に出るのは、主戦場であるアメリカの市場に対して、影響が少ないからです。
土合:本来、企業のブランドが輝いていたら、わざわざ光っているセレブを使う必要はないということでしょう。そのブランド自体の輝きを際立たせたほうが消費者に伝わりやすいので、別のイメージや情報が付加されてしまうセレブは、むしろじゃまになるので、そもそもセレブを使う意味はありません。でも日本では、相変わらず、セレブの輝きを借りたほうがブランドの輝きも伝わりやすいという状況です。セレブが出てくることで、「これは使い捨てじゃない、本格的なもの」と、送り手も受け手も安心できるという感じです。
足立:日本では、テレビCMに出ることがタレント自身の価値を高めるという面もあります。資生堂の広告などは、それに出ることが「登竜門」になっていたりしますよね。日本だけじゃなくて、アジアは全般的にセレブリティ広告が盛んです。もちろん、外資系でも例外はあります。たとえば、シャネルの広告塔は、昔から女優の登竜門でしょう。
土合:例外があるとはいえ、やはりその辺の事情は、日本企業と外資系企業はだいぶ違いますよね。それは、ブランドの作り方の問題なのか、広告の作られ方の問題なのか、あるいは、そうした広告が結果的にブランドをそういうふうにしているのか。外資系のブランドマネジャーは、広告のあり方、「このブランドの価値は、本当は何だ?」というようなことを、しつこいほど突き詰めて考えますよね。なぜなら、それがないと広告が作れないから。でも日本では、そこを突き詰めなくてもいい。今はやっている人が広告に出てくれれば、一応、広告担当のマーケターは「及第点」をもらえるわけです。
足立:「広告代理店がセレブリティ広告を提案してきたとき、どうすべきか?」という、この本の読者が直面しがちな問題ですね。