「デビューから2~3年はロン毛にしてたんですけど、そんな中、加藤さんとご一緒するイベントで遅刻してしまいまして……。そうしたら、加藤さんがイベントの中でいきなり『よし、坊主にしよう!! そして、切った髪をお客さんにプレゼントしよう!!』と。いろいろムチャクチャなんですけど(笑)、当時はムチャしてナンボみたいな空気がマンマンだったので、僕も嬉々として髪の毛を切り、それを実際お客さんにお渡ししたんです」
「ただ、翌日、丸刈りの顔を見て『これは、小汚いな……』と。そこで、加藤さんに相談したら『金髪にしろよ!! カッコいいじゃん』とおっしゃったんです。金髪なんて発想は当時の僕にはなかったし、元々そんなとげとげしいキャラクターでもないし……とも思ったんですけど、加藤さんの言葉に背中を押されて金髪にしました。結果、今に至るまで20年近く金髪です。自分では絶対に踏み出してなかった一歩。感謝しかありません」
妙な服従心ではなく、ただただ素直に先輩の言葉に耳を傾け、結果、それが周りを明るく、ハッピーにする。そんな才能を亮は持っていることを痛感した。
昨秋ごろから「自分が責任を持つから、亮の復帰をサポートできないか」という申し出が各所から出ていることも聞いていた。人柄とはいかに大きなものなのか。それを感じた。
03年春、人間国宝で落語家の故桂米朝さんをインタビューする機会に恵まれた。米朝さんが紫煙をくゆらせながら発した言葉が頭の中に何度も響く。
「弟子にもみんな、言うてます。『面白い芸人にならんでもエエ。いい人になりなさい』と」
聞いてもう18年ほど経つが、噛みしめれば噛みしめるほど、この言葉からは滋味があふれる。今回もまさに、口いっぱいにその味が広がった。(文・中西正男)