私は精神科医の馬場元です。老年精神医学の専門医として働いています。もちろん、高齢の方ばかりではなく、感情障害を持つ若い方など、メンタル治療においても数多くの患者さんを診てきました。
前回の「認知症は病名ではない!?」は読んでいただけましたか? 新年の今だからこそ、認知症を解き明かして人生100年時代に備えましょう。今回は「認知症の予防と治療」をお届けします。
家族や友人、もちろん大切な自分のためにも、ぜひご覧ください
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認知症の最大のリスクは、年を取ることです。残念ながら、長生きすればするほど、認知症になる確率は高くなります。しかし、長寿の人がみんな認知症になるわけではありません。
認知症には年齢以外にも多くの発症のリスクファクターがありますが,実はそのリスクファクターの多くは修正可能なものであり,今から気を付けることで認知症の発症や進行のリスクを減らすことができるのです。また認知症で最も多いアルツハイマー型認知症の原因のひとつは、「脳内にアミロイドβというタンパクが蓄積されるから」ということが知られています。
でも、アミロイドβが沈着していても認知症にならない人もいるのです。
■認知症のリスクファクターは、何か?
認知症のリスクファクターは、数多くあります。その中で,今から気を付ければ認知症(アルツハイマー型認知症)の発症リスクを減らすことのできるものとして,以下のようなものが指摘されています。
(1)糖尿病
(2)(中年期での)高血圧
(3)(中年期での)肥満
(4)運動不足
(5)うつ病
(6)喫煙
(7)低い学歴・学力
認知症の人は、2025年には約700万人になると予想されています。
ただ、毎日の食事や運動、生活習慣病の予防や社会参加に努めることで発症を遅らせたり進行を緩やかにしたりすることができる可能性があります。
遺伝性の認知症は存在しますが、ごく少数です。多くの認知症に、はっきりとした遺伝性は認められていません。