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50年に及ぶ格闘人生を終え、ようやく手にした「何もしない毎日」に喜んでいたのも束の間、突然患った大病を乗り越えて、カムバックを果たした天龍源一郎さん。来年に迎える70歳という節目の年に向けて、いま天龍さんが伝えたいこととは? 今回は「ギフト」をテーマに、飄々と明るく、つれづれに語ります。
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今回のテーマの「ギフト」といえば、やっぱり贈り物の話になるかな。そろそろクリスマスだから、まずはその思い出から話したいところだけど……個人的には、クリスマスに楽しい思い出なんてひとつもないんだ。俺は一番脂の乗りきっている26歳から5年間ほどアメリカ修行に行っていたけれど、向こうでは、想像していたホームパーティに呼ばれるようなことが一度もなくてさ。まあ、英語も話せなかったし、周りも面倒だったとは思うよ。当然アメリカだし街の雰囲気も派手に盛り上がるけど、一人取り残されて、ぽつねんとしていた侘しい思い出がよみがえるからね。
ただ、その昔、まだ小学生のときかな。酔っぱらった親父が珍しくクリスマスケーキを買ってきたことがあってさ。そのケーキを正月の10日ごろまで食べてたな(笑)。福井の田舎のガキにはホイップクリームが物珍しくてね。後生大事にしまっておいて、「うまいなぁ」って、ちょびちょびと舐めながらね(笑)。
あとは、相撲時代に地元福井県の後援者から届いた贈答品も印象深いな。のしがかかっていて、サイズや厚みも、札束で数百万円くらいは入っていそうな高級感があった。女将さんから、「天龍くん、贈り物が届いたよ」って渡されたときに、「これはご祝儀かな、中身がすごそうだ」って一瞬開けるのを戸惑ったんだよ。そうしたら、女将さんがひと言、「気にしなくて大丈夫よ。ビール券だから」だって。「勝手に開けるなんて、女将さんでもそれはないだろう!」って、すごいショックでさ(笑)。まあ、当時の高額なビール券で1年分くらいは入っていたから、それでもすごいんだけどね。