これまで男性主流と考えられてきたスポーツ種目でも、最近は多くの女性アスリートが活躍しています。しかし女性アスリートは体格も違えば、月経などの女性特有の周期変化もあり、競技生活と日常生活を続ける中でさまざまな悩みを抱えていることが多いのです。そこで、彼女たちが直面する問題点と、いま需要が増えつつある「女性スポーツドクター」について、日本臨床スポーツ医学会理事長の松本秀男医師に語ってもらいます。
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テニスや水泳、バレーボール、ゴルフ、陸上競技などの比較的身近なスポーツはもとより、サッカー、野球、ラグビー、格闘技系など、昔は男性しかやっていなかった種目でも、女性選手たちが活躍するようになりました。そのほか、フィギュアスケートや新体操、アーティスティックスイミングなど、身体能力の高さだけでなく女性らしい美しさが光る競技も数多くあり、女子スポーツの世界はやる人にとっても見る人にとっても魅力にあふれています。
ですが、一歩競技の世界に入れば、男女を問わずそこでは厳しいトレーニングが待っています。その運動量の多さに対して、食事によるエネルギー摂取が十分でなければ、容易にエネルギー不足の状態に陥ります。最近アスリートにとって大きな問題になっているのが、「利用可能エネルギー不足」です。耳にしたことがある人はどのくらいいるでしょうか。これは、継続的な激しい運動によって、からだが利用できるエネルギーが足りなくなるもので、心肺機能の低下・発育障害・精神障害など、さまざまな機能障害を起こす原因となります。
女性ではとくにこれを含む三つの症状を「女性アスリートの3主徴」と呼び、注目喚起がされています。
【女性アスリートの3主徴】
・利用可能エネルギー不足
・無月経
・骨粗しょう症
女性アスリートには、栄養不足による貧血以外にも、利用可能エネルギー不足を原因とする視床下部からの性腺刺激ホルモンの分泌低下により、無月経などの月経の異常が起こりやすくなります。また、女性ホルモンや成長ホルモンの分泌が減ると、骨代謝が低下して骨量が減少する、骨粗しょう症が問題になります。