アンタッチャブルがなかなか復活できなかった最大の理由がそれだったのではないかと思う。前述の企画の中でも東野が「こいつがすごいのは、柴田関係ないねん」と語っていた。もちろんアンタッチャブルはコンビとして面白いのだが、山崎は1人でも十分に面白さを発揮できてしまうタイプの芸人だった。だから、本人たちにコンビとして活動を再開する必然性がなかったのだ。

 コンビ再開が判明した瞬間、個人的には嬉しさよりも驚きの方が勝った。アンタッチャブルはこのまま復活しない可能性も十分にあった。それなのに復活した。そこに何よりも驚いたし、そのことが感動的だった。

「全力!脱力タイムズ」(フジテレビ系)で彼らが披露したのは、ほぼアドリブでややぎこちないとはいえ、紛れもなくアンタッチャブルの漫才だった。あの「M-1」を制した究極のコンビ芸が帰ってきたのだ。

 復活を見届けた後、ツイッターのタイムラインを覗くと、そこはアンタッチャブルの復活に対する人々の興奮と感動の書き込みであふれていた。普段それほどお笑いを見ていないような人ですら、アンタッチャブル復活のニュースには反応していた。

 これを見て彼らが復活した理由が分かった。「山崎も柴田もそれぞれ1人でも面白いから復活する必要はないのでは」などというもっともらしい正論は大間違いだった。なぜなら、アンタッチャブルはみんなが求めていたものだったからだ。

 彼らと同じ事務所で長年親交の深い東京03の飯塚悟志は、過去に放送された「ゴッドタン」(テレビ東京系)の中で「アンタッチャブルは俺の夢だったんだよ!」と叫んでいたことがあった。実際にはアンタッチャブルは彼だけではなく、日本中の人々にとっての大きな夢だった。2人のモンスターが復活のその日までずっと牙を研ぎ、モンスターであり続けたことに感謝したい。(ラリー遠田)

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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