私たちがフィリピンへ渡航した当初、小学1年生だった娘は、フィリピンと日本の違いを見つけては私に教えてくれた。「ねぇママ、フィリピンにはセミはいないんだね」「なんでジプニー(筆者注:フィリピンの乗り合いバス)には窓があるのに、ガラスがはまってないんだろうね。日本のバスはガラス窓だよね」――。思い返しても彼女の発言は柔軟性に富んでいて、みずみずしくさえあった。それは、移住当初、日本とは異なる文化を受け入れるのに苦労していた私とは対照的だった。
大人になってはじめて異文化に触れ、異なる考え方の人と出会ったとき、他者と自分の違いを感覚的に理解し、受け入れることは難しいだろう。子どものうちから、さまざまなバックグラウンドや考え方の違いを受け入れる力を養っておけば、新しい価値観を柔軟に取り入れる土台を作ることにもつながる。その柔軟性こそが、これからの時代に必要となる、生きる力ではないだろうか。Kyonの話から、英語習得だけでない、セブ留学の意義に気づかされた。
(文/井上綾子)