「短期決戦は戦力豊富なチームにしか勝ち目がないということはない。なにが起こっても不思議ではない。だからこそ難しい」

 楽天監督として初めて臨んだCSシリーズ。第1戦を勝利しながらも、その後連敗して敗退。想像以上に短期決戦の戦い方は難しかったという。そこには指揮官として『腹を括ることの重要性』を痛感した。

「CSはあっという間に過ぎ去った。監督としては初めてのCSで、ファーストステージは長くても3試合しかない。言葉は悪いけど調子が最悪な状態の選手がいた場合は、見切ることも必要になる。1試合勝負のトーナメントととも異なる。『次の試合には結果が出るのでは……』とどうしても期待してしまう自分もいた。監督として決断力の必要性を痛感した」

 ソフトバンクの強みは、短期決戦の強さに集約されている。2年連続リーグ制覇を逃しながら今年も日本一にたどり着いたように、戦い方を熟知している。

「短期決戦は、何が左右するかわからない。シーズン中に結果を出している選手が、そのまま短期決戦でも結果を出せるとは限らない。打者で言えば最初の打席で『H(ヒット)』のランプがつけば、それでトントンと乗っていける時が多い。精神的に安心するのももちろんだけど、流れというか、そういうものが左右する。これはいくら調整がしっかりできていても、どうしようもないこと。そういう意味では、選手、現場が地に足をつけてやるしかない。それこそ経験値なのかな」

 ボーイズリーグ時代から常にキャプテンを任されてきた平石コーチは自らのプレーヤーとしての視点とともに、常に俯瞰的にチームのことも見続けてきた。ソフトバンクと対戦を重ねる中で、強豪への興味も湧いていった。

「なぜあそこまで勝てるのか。ソフトバンクへの興味があった。今はチームに合流したばかりで慣れている段階。これからチームのこともいろいろ見えて来ると思う。以前から気になっていた勝ち続けているチームの秘密というか、そういうものも見えてくるんじゃないかな。楽しみです。対戦相手、解説者という、いわゆるチーム外ではなく、チーム内の人間として触れられる。野球人としての自分自身にも大きな財産になると思う」

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まだまだ学ぶことはある