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「おや?」と思って立ち止まる。そしてはじまる旅の迷路――。バックパッカーの神様とも呼ばれる、旅行作家・下川裕治氏が、世界を歩き、食べ、見て、乗って悩む謎解き連載「旅をせんとや生まれけむ」。第11回は「タイのムーヨンと日本の桜でんぶ」について。
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『歩くバンコク』というガイドブックの編集にかかわっている。その特集。タイのコンビニで「買ってはダメなもの」「買ってニンマリするもの」をわけて紹介することになった。ライターが訊きまわり、「買ってはダメなもの」で挙がってきたものにムーヨン入りのパンがあった。
ムーヨンはでんぶ(田麩)である。タイのそれは豚肉からつくったものが多い。マヨネーズを加えてサンドイッチの具になる。アンパン風のパンもムーヨンが具……。ライターはこう書いた。
──甘いタイのマヨネーズが日本人には無理。そしてムーヨンのジャリとしたそれでいて甘い味が無理。もう全部無理。
しかし、タイのコンビニのパンのなかでは、ムーヨン入りパンは存在感を放っている。20%はムーヨン入りではないかと思う。タイ人は甘いムーヨン入りパンが大好きなのだ。