○森田麻里子(もりた・まりこ)/1987年生まれ。東京都出身。医師。2012年東京大学医学部医学科卒業。12年亀田総合病院にて初期研修を経て14年仙台厚生病院麻酔科。16年南相馬市立総合病院麻酔科に勤務。17年3月に第一子を出産。小児睡眠コンサルタント。Child Health Laboratory代表
○森田麻里子(もりた・まりこ)/1987年生まれ。東京都出身。医師。2012年東京大学医学部医学科卒業。12年亀田総合病院にて初期研修を経て14年仙台厚生病院麻酔科。16年南相馬市立総合病院麻酔科に勤務。17年3月に第一子を出産。小児睡眠コンサルタント。Child Health Laboratory代表
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写真はイメージ(Getty Images)
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 日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、2人の女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は、自身も1児の母である森田麻里子医師が、「子どもの睡眠と健康の関係性」について「医見」します。

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 睡眠不足というと大人の問題を思い浮かべがちですが、日本では、子どもたちもかなりの睡眠不足です。アメリカ国立睡眠財団が推奨する睡眠時間は、6~13歳で9~11時間、14~17歳で8~10時間です。しかし2016年の国民生活基礎調査によると、日本の12~19歳の若者のおよそ9割は、睡眠時間が8時間を切っています。

 子どもの睡眠不足が健康に及ぼす影響については、たくさんの研究が行われていて、肥満が増えたり、問題行動を評価するテストのスコアが悪くなったりすることがわかっています。

 そして近年では、睡眠時間の不足だけでなく、睡眠をとる時間帯についても研究が進んでいます。大人では、生活が夜型になっていたり、週末に朝寝坊をしたりしているような場合、生活習慣病などのリスクが高まることがわかっていますが、子どもでも同様に健康への影響があることがわかってきているのです。

 例えば、2012~2016年にかけて、12~17歳の中高生804人を対象に行われたアメリカの研究があります(※)。この研究では、5日間にわたって活動量の測定を行うと同時に、体脂肪率の測定、そして食事や生活に関するアンケート調査を行いました。すると、女子では、夜型の生活をしていたり、平日に比べて週末に朝寝坊したりしているほど肥満傾向にあり、その傾向は週末の遅起きの場合のほうが強いことがわかりました。

 睡眠時間が短いことでも肥満は増えることがわかっていますが、今回の結果は、睡眠時間の長さによる影響を取り除いて調整したものです。男子では明らかな差は認められなかったものの、夜型や週末の遅起きでやはり肥満が多い傾向がみられました。

睡眠を取る時間帯は、人間の体が刻む1日のリズムである体内時計と関係しています。この体内時計が乱れていたり、社会生活のリズムと合わなくなっていたりすると、日中のパフォーマンスや健康に問題がでてきます。

 10代の子どもたちの多くは、学校に通うため、朝それなりに早く起きなければいけません。部活の朝練などがあれば、さらに朝早く家を出発することになります。しかしだからといって、早く寝られるわけでもありません。夜は受験のため塾に通い、帰宅後にさらに宿題や自宅学習をする子もいます。または、スマートフォンを使って、SNSで友人とのやり取りを延々としていたり、動画の視聴に熱中して、いつの間にか深夜になっていたりする場合もあるかもしれません。

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体内時計の乱れが引き起こす健康問題とは