思い返すと、今年5月下旬にトランプ氏が来日した時、安倍首相はゴルフ、大相撲観戦、炉端焼きの会食と接待攻勢を続けた。ところが、トランプ大統領はツイッターで「日本との貿易交渉で大きな進展が得られつつある。農業と牛肉が焦点だ。7月の選挙後まで待つことになるだろう。その後、大きな数字を期待している」(5月26日)と発信。7月の参院選が終わるまで「大きな数字」は発表しないという“密約”があることを暴露していた。トランプ大統領の予告通り、選挙が終わった直後から交渉が急速に進展し、今回の合意となった。
米国では来年11月の大統領選に向けた動きが本格化している。安倍首相とトランプ大統領の「選挙対策」の意味合いが強かった今回の交渉過程は、いまだ公表されていないことが多い。前出の鈴木教授は言う。
「このような日本に不利で、国際ルール無視の協定を国民に説明もなく署名し、発効させることは、国内的にも国際的にも過去に例がない。どうしてトランプ大統領の選挙対策のために、日本がここまでしなければならないのか」
協定の内容は、日本の国益にかなうものなのか。他国の貿易交渉に比べて不利な内容になっていないのか。国会での説明が求められる。(AERA dot.編集部/西岡千史)