『万能グローブ ガラパゴスダイナモス』の東京公演が、2/3から始まります。
作、演出の川口大樹くんから依頼があり、その2/4の公演終演後のアフタートークに出演することになりました。
実は、まだ一度も『万能グローブ ガラパゴスダイナモス』の芝居を観たことがないので、アフタートークも何を喋れるか、ちょっと不安な部分もあります。
では、なぜこの依頼を受けたのかという話なのですが・・・。
『万能グローブ ガラパゴスダイナモス』、通称ガラパは、福岡で活躍している劇団です。主にシチュエーションコメディを得意とし、今では1000人を越えるお客さんを動員するとか。地方で、この数は、大した物です。
川口君とは、僕が九州戯曲賞の審査員をやっている関係で知り合いました。
九州戯曲賞は、審査発表を本人達の目の前でやります。
審査会で結果を決めると、審査員はその足で候補者達が待つ居酒屋に行きます。
発表はその居酒屋で行い、そのあと候補者と審査員が飲みながら話をする。全く格式張らない。飲み会になれば、審査員と候補者というよりは、演劇に関わる先輩と後輩です。作劇術から仕事をしながら演劇をやり続けていく現実論まで、話題は多岐に亘ります。
特に地方で芝居をやろうと考えているアマチュアが、東京の演劇関係者と会える機会はなかなかありません。こういう機会にできるだけいろんな話ができたほうがいい。こちらにとっても刺激になることもあります。九州らしい、ざっくばらんなやり方で、僕は気に入っています。
川口君ともその席で知り合いました。
彼の作品はシチュエーションコメディです。
二年とも作風は同じ。ある一つの場所を設定し、そこに様々な人が出入りする。それぞれが嘘をごまかしたり、素っ頓狂な人物がでることで笑わせるスラプスティックです。
人物の出し入れやギャグの仕込み方など、テクニックはあります。
二年連続で最終候補に残ったのも、うなずける。
でも、おもしろい状況を作るための展開に持って行く流れが、少々荒っぽくて、僕も素直に受賞作としては推せませんでした。
それじゃなくても、こういう「ただ面白ければいい」という作風は、賞をもらうのはなかなか難しい。
僕自身がそうだったから、よくわかる。
審査員にアラを指摘されないような精緻な作品か、もしくは「ただ、面白いだけだが、ここまで面白ければそれでいい」と思わせるだけの力業か、いずれにしろ、かなり技量が問われることになる作風なのですね。
アカデミー賞の例をあげるまでもなく、エンターテインメントの世界でも受賞となると「ただ面白い、ただ笑わせる」だけの作品というのは、なかなか評価されにくいんです。ましてや演劇の賞となると、なおさらです。
それでも、「ただお客さんを面白がらせたい」。そのことだけを考え、その事だけを必死でやる劇団は、やっぱり応援したいです。実際、「ホンとしては荒いけど、きっと舞台を観に来たお客さんは喜ぶだろうな」と思えるようなサービス精神に溢れた脚本でもあったのは確かです。
しかし、お客さんに受けたいという気持ちをてらいなくストレートに舞台にぶつけるのは、博多の血なのですかね。
もっとも、川口君はいのうえひでのりと同じ大濠高校演劇部の出身。
高校一年の時、演劇部に勧誘され、部室で初めて見せられたのが新感線のネタ物公演、『直撃ドラゴンロック轟天』のビデオですから、僕達と同じ匂いがするのはむしろ当然かもしれません。僕らも、若い頃、自分達を突き動かしていたのは「お客さんを有無を言わせぬくらい面白がらせたい」という情動でしたから。
今回、ガラパ初の東京公演ですが、幸いにして前売りチケットは完売とか。
この不況のご時世にたいしたものです。
期待されている分、いい舞台をやってほしいですね。
自分がアフタートークで何を話せるか、それも芝居を観ないと僕自身わからない。まあ、それも楽しみではあるのですが。