佐藤二朗(さとう・じろう)/1969年、愛知県生まれ。俳優、脚本家。ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズの仏役や「幼獣マメシバ」シリーズで芝二郎役など個性的な役で人気を集める。ツイッターの投稿をまとめた著書『のれんをくぐると、佐藤二朗』(山下書店)のほか、96年に旗揚げした演劇ユニット「ちからわざ」では脚本・出演を手がける
佐藤二朗(さとう・じろう)/1969年、愛知県生まれ。俳優、脚本家。ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズの仏役や「幼獣マメシバ」シリーズで芝二郎役など個性的な役で人気を集める。ツイッターの投稿をまとめた著書『のれんをくぐると、佐藤二朗』(山下書店)のほか、96年に旗揚げした演劇ユニット「ちからわざ」では脚本・出演を手がける
この記事の写真をすべて見る
常夏のハワイで日陰にいた理由とは? ※写真はイメージです(Getty Images)
常夏のハワイで日陰にいた理由とは? ※写真はイメージです(Getty Images)

 個性派俳優・佐藤二朗さんが日々の生活や仕事で感じているジローイズムをお届けします。今回は「俳優の制限」についてです。

*  *  *

 俳優というのは自由気ままな人種に思われがちですが、そしてある程度は自由気ままな人が多いことは確かですが、意外に俳優であるがゆえの「制限」も存在します。

 たとえば現在、夏、真っただ中ですが、「日焼け」。僕は子どもの頃から色が白かったので、褐色の肌、小麦色の肌というものにずっと憧れがあります。しかしたとえば連続ドラマを撮影していて、5話までは色白なのに6話で急に小麦色の肌になったらエライことです。お前は完全に海か日サロに行ったろとなります。それが叙情的な暗いトーンの文学作品なら、なんでお前一人バカンス気分なんだとなってしまいます。

 テレビ東京系で放送された「下北沢ダイハード」というドラマがありました。一話完結のそのドラマの中で、僕は「シーモキーター」という作品に出ました。ええ。映画「ターミネーター」のパロディーです。未来からやって来たロボット「シーモキーター」が、サブカルの聖地、下北沢ヴィレッジヴァンガードに降臨し、現代のサブカルの繁栄を阻止しようとするという、なんというか、ここまで何の話を書いてたか忘れてしまうくらいの濃密な設定ですが、その「シーモキーター」を僕が演じました。

 本家の「ターミネーター」をご覧になった方々はご存じだと思いますが、未来からタイムスリップして現代に降臨する時、ターミネーターは(つまりシーモキーターも)全裸です。全裸です。今なんで2回言ったか分かりませんが、中年に相応しい怠惰な肉体を余すことなく全国の視聴者に晒すことになった僕ですが、実はこの作品の撮影に入る直前まで撮っていた作品が、映画「50回目のファーストキス」。はい。ロケ地は、ハワイ。常夏のハワイ。嗚呼、ハワイ。嗚呼、全裸。

 お分かりでしょう。常夏ハワイの海で日焼けしたくても、その後の作品で全裸になるもんだから、しかもロボットなもんだから、絶対に日焼けの跡を残してはならない。さらにミスター色白の私の肌は、顔に似合わず敏感肌の私は、すぐ赤く焼けてしまう。主演の山田孝之や長澤まさみ、他の共演者たちが撮影の休みの日にハワイの海に出掛けても、私はそれを指をくわえて見ているしかなかった。嗚呼、ハワイ。嗚呼、全裸。

次のページ
パーマNGはもちろん でも「制限は嫌いじゃない」