1987(昭和62)年4月1日に国鉄が分割民営化され、「あずさ」はJR東日本管内のみを走る特急となった。副都心として成長著しい新宿と、人気の信州を結ぶ「あずさ」は、中央高速の高速バスと対抗することもあり、JR東日本の特急の中でも特に注力される列車となった。

 そして、1988(昭和63)年3月のダイヤ改正で、183系の内外装を改造したグレードアップ編成が登場し、「グレードアップあずさ」の通称で運転された。国鉄特急色を見慣れた目には白い車体色は新鮮で、客室も指定席とグリーン車の座席の床がかさ上げされて眺望が良くなるなど、「あずさ」に注力されているのがよく分かる内容であった。これはその後まで続く、内外装を改造した特急の先駆けともいえるものだった。

 この改正では、甲府発着の「あずさ」が「かいじ」として独立した。ひらがなで書くと分かりにくいが「かいじ」とは「甲斐路」であり、甲府発着にふさわしい列車愛称になった。なお、8時ちょうど発は引き続き「あずさ」が継承した。

 1994(平成6)年12月、このダイヤ改正で「スーパーあずさ」が誕生した。8時ちょうど発は「あずさ」のままであるが、愛称号数はなんと「あずさ55号」という数になった。これは一気に本数が増えたのではなく、「スーパーあずさ」を1号から、「あずさ」を51号から、「かいじ」を101号からと列車ごとに号数を区分して振ったことによる。

「スーパーあずさ」は振り子式のE351系を使用して、カーブの通過速度を速めることで所要時間を短縮した速達型の列車である。振り子式車両はJR東日本で初めてであり、その後は採用していない。

 1997(平成9)年4月のダイヤ改正で、8時ちょうど発には「スーパーあずさ3号」が選ばれた。車両は振り子式のE351系で、JR世代を代表する特急のひとつになったのである。新宿8時00分発、松本10時37分着というダイヤはビジネスにも使いやすく、速達型列車に適していた。そのため、長期にわたり8時ちょうどは「スーパーあずさ」が担い、2018(平成30)年にはE353系が投入された。

 しかし、2019(平成31)年3月からのダイヤ改正で、ついに「スーパーあずさ」の名称は廃止され「あずさ」に統一することになった。現在は比較的停車駅が少ない「あずさ5号」が、新宿8時ちょうどの「あずさ」としてE353系で運転されている。(文/高橋 徹)

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