■表舞台から姿を消した黒木香にも注目集まる

 潤沢の予算だからこそ成立した衝撃の問題作。その一方で、アダルト業界の舞台裏も克明に描き、エロ業界の偉人たちの素顔に迫ることができるというのも特筆すべきこと。週刊誌の記者は次のように語る。

「村西監督の『ナイスですね~!』『ゴージャスでございます』という決め台詞は、彼が英会話教材のセールスマンだったことに由来していたり、彼がどんな事情でエロに傾倒していき、アメリカで収監され懲役370年の刑をくらって、どのように復活したかなど、虚実ないまぜに描いているのがエロ偉人伝としても非常に興味深い。村西監督は間違いなく日本AV界のパイオニアですが、度重なる逮捕や借金、スキャンダル、最近ではSNSでの過激発言などもあり毀誉褒貶の激しい人物でもあります。また、村西とおるの愛人と言われていたミステリアスなAV女優・黒木香の人生も並行して描き、第5話でふたりの人生がシンクロしていくさまも見事でした。黒木香は“ワキ毛女優”として一斉を風靡し、バラエティ番組にもひっぱりだこでしたが90年代はじめに引退。94年に自殺未遂を図るなど世間を騒がせましたが、それ以降の消息はほとんど聞こえてこない。この作品で再び黒木香にスポットが当たり、再評価されるかもしれません」

 TVウオッチャーの中村裕一氏は本作の魅力を次のように分析する。

「ブリーフ姿どころか全裸もいとわず村西監督のお家芸である『駅弁ファック』を全力で披露した山田はもちろん、村西の才能に惹かれて彼の右腕にまでのし上がるキレ者役の玉山鉄二、村西をアダルトの世界に誘い、やがて裏社会の奥深くへ沈んでいくチンピラを演じた満島真之介の真に迫る演技は、ほかの作品では見たことのないリアルな魅力と熱気に満ちあふれていました。また、鈴木亮平、須賀健太、田村淳、ベッキー、筧美和子など配信開始直後から同業者である俳優や芸能人たちから賞賛の声が殺到したのも、コンプライアンスに堅く縛られた今の映画やドラマにモヤモヤした思いを抱いていたことの反動と言えるでしょう。この熱狂的かつ爆発的な人気を受け、早くもシーズン2の制作が決定。衛星放送事業に手を出して大失敗するなど、さらに暴走する村西の狂気を帯びた人物像がより深く描かれ、シーズン1を上回るハイクオリティーでスリリングなエンターテイメントを見せつけてくれることは間違いありません。業界から早々と身を引き、現在は隠遁生活を送っていると言われている黒木香さんに再び注目が集まることも予想されますし、今、絶対に観ておきたい作品であることは確実です」

 主演の山田孝之だけではなく、共演者やスタッフ全員が“全裸”になって挑み、配信直後に続編が決定するほどの高い評価を得た本作。既にシーズン2の製作も決まっている。酷暑が続くこの夏こそ、涼しい部屋で熱気に満ちたこの作品を楽しむにはうってつけだ。(藤原三星)

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藤原三星

藤原三星

ドラマ評論家・芸能ウェブライター。エンタメ業界に潜伏し、独自の人脈で半歩踏み込んだ芸能記事を書き続ける。『NEWSポストセブン』『Business Journal』などでも執筆中。

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