現役時代は石川とともにプレーし、現在は投手コーチを務める石井弘寿は、後輩のすごさをそう語る。さらに──。

「一番は負けん気というか、気持ちの強さですね。普段はあんな優しいのに、投げてる時は近寄れないですからね。目なんか血走っちゃって。これだけ大きいプロ野球選手がいっぱいる中で、あの身長でそいつらに勝ってるっていうのは、人一倍気持ちも強くないとできないですよ」

 その石川にはこだわりがある。しばしば「勝ちがつくのがピッチャーにとっては一番の薬」というように、先発投手として勝ち星へのこだわりは誰よりも強い。

「やっぱり勝ってナンボだと思います。もちろんチームが勝つのが大前提ですけど、先発をやってる以上は、勝ち星がつきたいのが本音だと思うんで」

 これまでも大きな目標として見据えてきた「200勝」まで、あと31勝。来年の1月には不惑を迎えるとはいえ、決して手の届かない数字ではない。少年時代にたまたまテレビで見たプロ野球中継でその「不思議な投球」に目を奪われ、いつしか憧れの存在となった元中日の山本昌は、39歳となった2004年までに通算173勝。それから4年後の2008年に42歳11カ月で通算200勝を達成し、50歳まで現役を続けた。

 現在39歳の石川も、ここまで通算169勝。実働29年で2ケタ勝利10回の山本に対し、プロ入りからの5年連続を含め2ケタ勝利11回と、すでにこれを上回る。もっとも石川が最後に10勝以上したのは、ヤクルトが14年ぶりのリーグ優勝を果たした2015年。この時は自己最多に並ぶ13勝でチームの勝ち頭となったが、その後は2ケタ勝利に届いていない。

 今シーズンも初勝利を挙げたのは5月11日の巨人戦(東京ドーム)。6月29日までは12試合の先発で2勝5敗と負けが先行していた。ただし、この時点での防御率3.43が示すように、そこまで内容が悪かったわけではない。

「傍からは『石川が投げてるようじゃダメだ』って言われますけど、彼が良いから投げてるわけで、ほかに(ピッチャーが)いないから石川に投げさせてるわけじゃないです。ちゃんとアイツが結果を出して、競争に勝ってローテーションの一角を守ってるんで、そこはみんな勘違いをしないでほしいですね」(石井コーチ)

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最後の200勝投手かも