ヤクルト・石川雅規 (c)朝日新聞社
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「いつかは打たれるんだろうなって思いながら投げてました」

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 8月14日のDeNA戦(神宮)。8回1死から売り出し中のルーキー、伊藤裕季也に本塁打を浴び、球団史上7人目(8度目)のノーヒットノーランをあとアウト5つのところで逃しながらも、ヤクルトの石川雅規は淡々としていた。

 2012年のシーズン開幕戦(東京ドーム)では、巨人打線を8回までノーヒットに抑えながら、9回1死から坂本勇人に左前打を許した。昨年8月12日の中日戦(ナゴヤドーム)では、1人の走者も許さないパーフェクトピッチングを続けて8回のマウンドに上がったこともある。そんな経験があったからかもしれない。

「5回ぐらいから意識してました」と言ったのは、3試合ぶりに先発マスクをかぶった正捕手の中村悠平のほうだ。自身はアマチュア時代も含めノーヒットノーランを受けた経験はなく、この手の記録には口に出すと途切れるというジンクスがあるため「石川さんには言わないようにしてましたけど、個人的にはいい緊張感の中でやらせてもらってました」と振り返った。

 小川淳司監督も「当然、あそこまでいけば(意識していた)」といい、現在は5番打者ながら投手としても通算18勝を挙げている雄平は「やってほしかったですけどね。(ゲーム後半は)そればかり思ってました」と話すなど、ベンチやナインも期待した大記録。残念ながら今回も手が届かなかったが、大量リードを背に8回1失点でマウンドを下りた石川には、ご褒美が待っていた。

 これで今季6勝目はチーム単独トップ。18年のプロ生活で積み上げてきた勝ち星の数は通算169個となった。これは日本プロ野球の現役投手としては最多。ヤクルトの球団史上では、前身の国鉄・サンケイ時代を通じても金田正一の353勝、松岡弘の191勝に次いで3位となる。

 身長167センチと、プロ野球界のみならず一般社会でも小柄な部類に入る石川が、これだけの数字を残すことができているのはなぜか? 石川のプロ入り時は現役選手で、現在はヘッドコーチの宮本慎也がいう。

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朝6時半からランニングも