石川は現時点では規定投球回には達していないが、10試合以上に先発しているヤクルトの投手では、防御率3.25は群を抜いてトップ(2位は小川泰弘の4.51)。7月6日の中日戦(ナゴヤドーム)からは4連勝中で、この間は先発6試合中4試合でクオリティースタート(6回以上投げて自責点3以下)と、安定した投球を続けている。
完投が激減している現代、特に投手が打席に入るセ・リーグでは、先発投手は試合のすう勢が決まる前に交代させられることも少なくない。そもそもピッチャーは、いくら好投しても味方の援護がなければ勝てない。だから投手の勝敗よりも、ゲームメイクに目が向けられることも多いが、「先発は試合の勝敗を背負うべき」と石川は考えている。
「試合をつくるのは大事ですけど、先発をやる以上は勝ち負けっていうのはつけたいっていう思いがあります。大前提としてチームが勝つっていうのはありますけど、そこはこだわっていきたいですね」
現在、日米通算ではヤンキースの田中将大が通算171勝を挙げており、巨人の岩隈久志、中日の松坂大輔がともに170勝でこれに続くが、日本のみで石川の後を追うのは内海哲也(西武)と涌井秀章(ロッテ)の133勝。そう考えると、日本のみで200勝しそうな投手はもうなかなか現れないだろうし、もしかしたら石川が何年後かにこれを達成した暁には、それが最後になる可能性もある。
「肩やヒジの故障がないのが僕のストロングポイント。痛くならない限りは、なんとか粘ってやりたいなと思います」という石川。今季初勝利を挙げた5月11日のヒーローインタビューでは「腕がちぎれるくらい思い切って、しっかりと投げ続けたいと思います」と話していたが、これからも高みを目指して必死にその左腕を振り続ける。(文・菊田康彦)
(文中敬称略)
●プロフィール
菊田康彦
1966年生まれ。静岡県出身。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身。2004~08年『スカパーMLBライブ』、16~17年『スポナビライブMLB』出演。プロ野球は10年からヤクルトの取材を続けている。