日本ではホテル業界が政府にエアビーを厳しく取り締まるように働きかけています。イスラエルでは政府とテルアビブ市長は規制をかけることを強く拒否しています。エアビーがなければ若い旅行者はイスラエルに来ないであろうというのが理由の一つです。エアビーは地方経済の拡大の道のようにみえます。イスラエルは一般的にエアビーをサポートするようになっています。観光業はイスラエルでは成長産業で、多くの旅行者がイスラエルの通りにあふれることは異文化交流に貢献することになります。

 どうして日本とイスラエルではエアビーへの反応がこんなに違うのでしょうか。イスラエルでは日本以上にホームシェアビジネスが経済拡大に大事だと考えられています。イスラエル政府はホテル産業に対しては保護的ではありません。また、日本人は近所で多くの外国人旅行者が歩くことを受け入れることにまだ慣れていないのかもしれません。イスラエルは田舎でも外国人観光客をみかけることには慣れています。

 個人的には海外旅行する際はいつもエアビーを利用して民泊します。これまで韓国、台湾、欧州の数カ所で貴重な体験をしています。宿泊した場所で地元の人とおしゃべり、地元のお店で買い物などして、地域のコミュニティーと触れ合うことは、孤立したホテルに泊まってそこのサービスだけしか利用しないといった過ごし方よりずっと楽しいものです。

 日本のリーダーは、日本文化を楽しみ、帰国したら友人や家族にその面白さを話すような外国人観光客を増やしたいようにみえます。そのような外国人は最高の日本文化大使になるに違いありません。外国人観光客のニーズは多様です。特に発信力のある現代の若者が、金銭的な理由で日本旅行を諦め他国に行ってしまう前に安価な宿泊場所を提供することは、とても重要なことだと思います。

○Nissim Otmazgin(ニシム・オトマズキン)/国立ヘブライ大学教授、同大東アジア学科学科長。トルーマン研究所所長。1996年、東洋言語学院(東京都)にて言語文化学を学ぶ。2000年エルサレム・ヘブライ大にて政治学および東アジア地域学を修了。07年京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科修了、博士号を取得。同年10月、アジア地域の社会文化に関する優秀な論文に送られる第6回井植記念「アジア太平洋研究賞」を受賞。12年エルサレム・ヘブライ大学学長賞を受賞。研究分野は「日本政治と外交関係」「アジアにおける日本の文化外交」など。京都をこよなく愛している。

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