「振り付けられれば踊る男」斎藤工さん (c)朝日新聞社
「振り付けられれば踊る男」斎藤工さん (c)朝日新聞社
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矢部万紀子(やべまきこ)/1961年三重県生まれ、横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』『美智子さまという奇跡』
矢部万紀子(やべまきこ)/1961年三重県生まれ、横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』『美智子さまという奇跡』

 草刈民代さんを見るたびに思い出す言葉がある。それは映画「Shall we ダンス?」の撮影前、彼女が語ったという言葉。

【写真】斎藤工が「この人になら心を委ねてしまう」と言った女性とは?

「社交ダンスは踊ったことはありませんが、振り付けていただければ踊れます」

 草刈さんはバレリーナで、映画初出演。公開直後に監督の周防正行さんと結婚した。週刊誌の記者として2人のエピソードをあれこれ取材し、入手した一つがその言葉だった。

 バレリーナとしての誇りと、自分の技術への圧倒的な自信。それがよく表れていて「草刈民代、やるなー」と思い、以来彼女の活躍を見るにつけ、思い出す。

 ここから斎藤工さんの話をする。彼は「振り付けていただければ、踊れます」の人だと思う。主役でなくても、カッコイイ役でなくても、踊れるから踊る。そういう人だと思う。
と思ったきっかけは、8月4日に放送された「いだてん~東京オリムピック噺~」29回と、その回の斎藤さんについて熱く語る宮藤官九郎さんだった。

 斎藤さん演じる高石勝男は、2度の五輪出場で銅メダルも取った実在の水泳選手。ピークを過ぎたロサンゼルス五輪では、「ノンプレイングキャプテン」という立場を与えられる。選手になることを諦めていない高石は、選手村でも門限を過ぎてからこっそり練習する。だが記録は伸びず、苛立ち、「ノンプレイングキャプテンなんて、補欠の大将やんけ」と叫ぶ。そして最終選考会、結果は最下位。

 その放送翌日、宮藤さんはパーソナリティーをつとめるラジオ「ACTION」で斎藤さんについて喋りまくっていた。「今、俺、誰に抱かれたいかっていったら、斎藤工さんだと思いました」と言い、「今日か明日、抱いてくれないかなー」と重ねていた。

 宮藤さんはそもそも「高石=斎藤工」というキャスティングを聞いた時、「出てくれんのかなー」と思ったそうだ。まだ執筆中だったから、泳いだり試合に出たりというカッコいい場面がないかもしれない、それでも引き受けてくれるかなーと。

 ところが、斎藤さんからオーケーが出た。それでもあまり腑に落ちていなかったことを、宮藤さんはこんなふうに語っていた。

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宮藤さんが語った斎藤工さんとは?