一見アイドル性を求められる職場のようだが、体力勝負の仕事でもある。試合開始の2時間ほど前から販売を始め、重さ約10キロのビールサーバーを背負ってスダンドの階段を何度も上り下りする。腰には大量のコップを常備し、狭い通路でお釣りのやり取りもしなければならない。観客の観戦を妨げない配慮も求められる。

「始めたばかりのころは翌日に歩けなくなるほど筋肉痛になりました。ユニホームが薄着なので、オープン戦やクライマックスシリーズの時期は寒さにも悩まされます。暑い日は体力的にはきついのですが、ビールの売れ行きが伸びるのでチャンスですね。この仕事のおかげで体力には自信があります(笑)」

 気になる雇用形態だが、ビアガールは一般的に、給与は1千円前後の時給+売上によるインセンティブとされるようだ。売り子の経験者として有名なタレントの「おのののか」さんなど、トップの売り上げにもなると時給は8000円にまで跳ね上がるケースもある。オープン戦の始まる2月から10月のシーズン中が働ける期間だ。他球場の売り子も球場ごとに雇われているケースがほとんどで、球場を本拠地としているチームが日本シリーズに進出すれば、その分期間は伸びることになる。美緒さんの場合、前月の下旬に球場の試合予定をもとにシフト希望を出している。シーズン中は売り子のバイトをメインにし、シーズンオフは掛け持ちのブライダル関係のバイトを増やして、収入を一定に保っているそうだ。

 勤務時間は試合開始の2時間ほど前から試合終了までだ。サーバーが空になればタンクのある球場裏のプレハブに補給に行き、またスタンドに戻るのを繰り返す。試合が順調に進んでも最低5時間ほどは歩きつづける計算になる。売れ行きが落ちる終盤の八・九回は、体力的に慣れていない新人は撤収することもあるが、ベテラン勢は最後までスタンドに出る人も多い。

「調子のいいときは20分おきにビールを補充します。休憩は補給所で自由に取れますが、ほとんどの人は休まないですね。たくさん売りたいというのもそうですが、やっぱりみんな野球が好き。球場であの空気を味わいたいんだと思います」

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