近年では、2018年5月から8月にかけてコロラド州で神経疾患の小児34人からエンテロウイルス71が検出されました。これを受けて、手足口病の主な原因として知られるエンテロウイルスA71による小児神経疾患がコロラド州で流行していると、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)が報告しています。

 手足口病の患者の約9割は6歳以下の乳幼児で、半数は2歳以下の乳児です。集団生活をしている保育施設や幼稚園では子どもたち同士の距離が近く、濃厚な接触が生じやすいことや、原因となるウイルスに感染した経験がなく免疫がない子どもたちが多いため、集団感染が起こりやすいのです。

 学童期を過ぎると大半がウイルスにさらされることにより抗体ができているため、大人での発症は子どもよりも多くはありません。けれども、原因となるウイルスが1種類ではないため、過去に手足口病を経験しても、別のウイルスが原因となって再び手足口病を発症することがあります。一度感染したウイルスに対しては免疫ができるため、同じ種類のウイルスによって再び発症することはありませんが、今までに感染したことのないウイルスが原因の場合は、大人であっても感染して手足口病を発症してしまうのです。

 さらに、子どもよりも大人のほうが、症状が重く出やすいことが報告されています。発疹は手足や口以外にひじ、ひざ、お尻などに見られることもあり、発疹の痛みは大人のほうが強く出るため、足裏などに発疹がひどく出てしまうと、痛みで歩けないほどになります。また、インフルエンザにかかる前のような、全身倦怠(けんたい)感や悪寒、関節痛や筋肉痛といった症状が出ることがあるのも、大人の手足口病の特徴です。

 ちなみに、手足口病と診断されても、幼稚園や保育園においても出席停止期間は定められてはいません。食事ができて元気がよければ登園可能となっています。大人も同様の判断でいいでしょう。

 手足口病には有効なワクチンはなく、また手足口病の発病を予防できる薬もありません。治った後でも、比較的長期間、便などからウイルスが排せつされることがありますので、排せつ物の処理やタオルの使い回しには注意が必要です。

 やはり、手洗いによる予防を徹底することが大切です。公共交通機関などの場で子どもと接触する機会はたくさんありますし、今までに感染したことのないウイルスが原因の場合は抗体を持っていないため、感染して手足口病を発症してしまう可能性は十分考えられます。子供と普段接触する機会がはないという方も注意してくださいね。

○山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員

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