このほか、特急専用車を走らせている関東の私鉄では、西武鉄道と京成電鉄があるが、どちらも定期券+特急券での乗車を認めている。

 ちなみに、各私鉄の通勤圏からの特急料金を見てみると下記のようになる。運賃(定期券も可)は別途必要になる。

●西武:池袋~所沢間400円、池袋~飯能間500円
●小田急:新宿~相模大野間410円、新宿~秦野間・藤沢間620円
●東武:浅草~春日部間510円、浅草~久喜間510円(距離や列車によって異なる)
●京成:モーニングライナー・イブニングライナーは京成上野~成田空港間共通で410円

 JRの普通列車グリーン車の50kmまで770円、51km以上980円(ともに平日事前料金)という料金を考えると、「特急列車で通勤したい」という需要が多いのは納得がいく料金である。

■観光利用と輸送力を両立した新型特急

 このところ、関東の大手私鉄では新型車両の投入が相次いでいる。いずれも大胆なデザインで華やかな印象であるが、実は利用実態に即して通勤需要を重視しているのが共通点である。

 東武が2017年4月に投入した500系「リバティ」は3両編成で、分割併合をしやすくし、これまで特急の設定がなかった東武アーバンパークライン(野田線)や野岩鉄道・会津鉄道直通列車にも特急が登場した。日光線・伊勢崎線系統に広く投入されて「リバティきぬ」「リバティけごん」「リバティりょうもう」が設定されたが、特に東武アーバンパークラインの帰宅時間帯に新設された「アーバンパークライナー」は紛れもなく通勤特急で、多くのエリアで着座志向があるのが分かる。

 小田急では2018年3月に新型ロマンスカーの70000形GSEを投入した。「箱根に行く観光特急」というイメージが強く、小田急でもそういうCMやポスターでPRしているが、実際は通勤輸送が多く、座席の確保が最重要課題なのである。しかし、それをストレートに具現化した30000形EXEは、列車を運行する側や通勤利用客にとっては都合のいい列車であるが、ロマンスカーの伝統が感じられず、鉄道ファンからの人気を得られなかった。2008年に登場した60000形MSEは、東京メトロに乗り入れる面が強調されているが、実は座席数の確保という30000形EXEのコンセプトを継承しつつ、2005年に登場した50000形VSEのエッセンスを入れて成功した。

 70000形GSEも座席数の確保は最大課題であった。連接構造を採用するとカーブでのオーバーハングがないため車端部の乗り心地は良いが、1両が短くなるため乗降口が増え、1編成あたりの座席数を確保しにくい。そこで、ボギー構造を採用して座席数を確保しつつ、車端部の乗り心地については車体動揺防止制御装置を搭載して改善を図っている。一方で前面展望席を採用し、観光特急としてのロマンスカーの魅力も併せ持たせた。

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特急がない路線には座席定員制列車を