「外国人って、日本の野球に順応しようとするのか、しないのかで全然違いますから。彼の場合はすごく日本の野球を勉強しようとしてるし、日本の野球に合わせたスタイルにしようとしているんで、そこが一番じゃないですかね」

 常に穏やかで笑みを絶やさず、物腰も柔らかなその人柄を称えるチームメイトも多い。同じ救援投手の近藤一樹が「性格がいいんで、ほっとけないんですよ。困っていたら、助けてあげたくなるんです」といえば、捕手の中村悠平も「僕が見てきた外国人(選手)の中でも、一番優しいなって思います。この前も山田(哲人)の誕生日にプレゼントを買ってきたり、なかなかそこまでできないですよ」と賛辞を惜しまない。

 ヤクルトは7月20日現在で首位の巨人に16ゲームもの大差をつけられて最下位に沈んでいるものの、マクガフは「2位、3位はまだ射程圏内にある。このところ先発ピッチャーが頑張って良い戦いができているから、プレーオフ(クライマックスシリーズ=CS)出場の可能性は十分にあると思っている」と先を見据える。

「一番はチームが勝つことであり、プレーオフに出ることだから、そのためなら何でもする。石山が復帰したら、僕はまたセットアッパーに回ってもいいしね」

 現時点でも、チーム試合数の半数を超える45試合に登板していながら、「今のところはまだ疲れは感じていないよ。去年のオフは例年以上に練習に励んだから、その成果じゃないかな」と笑うマクガフ。その献身ぶりには、石井コーチも「どうしても登板過多なんで、しっかりケアもしてますけど『いつでも行けるよ』なんて言ってくれると、涙が出てきますよ」と感謝の念を隠さない。

 ここまで紡がれてきた“便利屋”から守護神へのサクセスストーリーには、CS出場という続きがあるのか──。それは、これからの残り55試合にかかっている。(文・菊田康彦)

●プロフィール
菊田康彦
1966年生まれ。静岡県出身。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身。2004~08年『スカパーMLBライブ』、16~17年『スポナビライブMLB』出演。プロ野球は10年からヤクルトの取材を続けている。