大塚篤司/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医
大塚篤司/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医
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※写真はイメージです(写真/getty images)
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 無意識もしくは衝動的に髪の毛を抜くことで起きる「抜毛癖」。京都大学医学部特定准教授で皮膚科医の大塚篤司医師は、受験生時代に過度のストレスで髪の毛を抜く癖がつき、一時ハゲるまで抜くこともあったそうです。その癖を直すために大塚医師が実践した具体的な行動を紹介します。

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 私は高校時代、思春期をこじらせ勉強もせずに遊んでばかりいました。成績はみるみる下降し、あっという間におちこぼれました。高校3年の夏に受けたセンター試験の模試はひどいもので800点満点中300点台。

 私の家は医者家系ではないのですが、自分が小児ぜんそくだったこともあり将来は医者になりたいと思っていました。高校3年のとき、父親が大けがをしたことがきっかけに「やる気スイッチ」が入りました。毎日猛烈に勉強しました。眠気に負けないように手の甲に針を刺して勉強をした日もあります。

 自分を極限まで追い込んで勉強、と言えばかっこよく聞こえるかもしれません。

 でも実際、やりすぎはよくありません。私は過度のストレスで髪の毛を抜く癖がつきました。トリコチロマニア(抜毛癖)という症状です。

 トリコチロマニアとは、無意識もしくは衝動的に髪の毛を抜くことで起きる脱毛症で、小学生までの女の子に多いとされています。

 私の場合、机に向かい問題集と向き合って10時間以上過ごす中で、ストレスから髪の毛をいじってしまうようになりました。

 そして、気がつけば髪の毛を抜いてしまうようになりました。

 しばらくは、右の前髪付近だけ毛が薄くなっていました。

 医者になってから本気でトリコチロマニアを直そうと取り組みました。その結果、完治はしなかったものの症状は改善しました。髪の毛をいじる癖は直っていませんが、ハゲるまで毛を抜くことはなくなりました。

 体に悪いこと、健康に悪いことを続けてしまう原因のひとつは、その行為になんらかの快楽が伴うからです。

 たとえば、アトピー性皮膚炎の患者さんの多くは体をひっかくことは肌に悪いと自覚しています。それでもかくと気持ちいいし、血が出るまでかきむしった後は罪悪感が残ります。

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