7月19日、吉本興業株式会社が所属タレントである雨上がり決死隊の宮迫博之とのマネジメント契約を解消したことを発表した。反社会的勢力の主催する会合に出席していた件で宮迫はすでに謹慎中だったが、吉本興業は「諸般の事情を考慮し、今後の宮迫博之とのマネジメントの継続に重大な支障が生じた」として、契約解消という決定を下した。

 最新の『フライデー』8月2日号では、宮迫が前科3犯の金塊強奪犯と飲みの席で出会い、金銭を受け取ったという写真付きの記事が掲載されていた。反社会的勢力との関係が改めて報じられたことで、事務所から宮迫に最も重い処分が下された形となった。

 芸人の間からは宮迫を擁護する意見が目立つ。事務所を通さない営業や飲みの席で反社会的勢力の人間とたまたま居合わせてしまったことがそれほど悪いことなのか、と彼らは訴えている。面倒見がいい宮迫のことを慕っていた芸人もたくさんいる。それだけの人望があったからこそ、厳しい処分に戸惑う人が多いのだろう。

 宮迫がこのような最悪の事態を招いてしまった理由の1つは、彼自身の芸人としての特性にあると思う。それは「極度に自己愛が強くイジられ下手である」ということだ。それ自体は必ずしも悪いことではないのだが、今回の場合、そのことが事態を悪化させ、取り返しのつかない局面を迎えてしまったのではないか。

 宮迫は、自分の芸人としての特徴について著書の中でこう書いている。

《私はちょくちょく才能あふれる人たちに「宮迫の能力をグラフにすると、すごくキレイな六角形になる」と評される。まっ、これは完全に自慢なのだが、よくよく考えてみてもたしかにそうなのだ。というのも、昔からその気になってできないと思ったことがほとんどないのである》
(雨上がり決死隊著『雨上がり文庫』小学館文庫より)

 芸人にはそれぞれ得意不得意があるものだが、宮迫は幅広い分野で自他ともに認める卓越した才能を持っていた。キャラクターを演じるコントができて、身体能力が高く体を張った笑いもお手のもの。トークではボケもツッコミもこなし、MCとして番組を回すこともできる。さらに、芸達者な一面があり、歌も演技も上手い。何をやらせても人並み以上の力を発揮する多才な芸人だったのだ。

著者プロフィールを見る
ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

ラリー遠田の記事一覧はこちら
次のページ
多才な芸人がオープンにできなかった唯一の弱点