近年、よく聞く「予防歯科」という言葉。歯科医院のホームページなどでもよく見かけますが、いったい、何をするところなのでしょうか? 予防歯科での診療に保険は使えないのでしょうか? 『なぜ歯科の治療は1回では終わらないのか? 聞くに聞けない歯医者のギモン40』が好評発売中の歯周病専門医、若林健史歯科医師に疑問をぶつけてみました。
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「予防歯科」という言葉は確かに歯科医院のホームページでよく見かけますね。ただし、これは歯科の看板などへの表示が法律で認められている「標榜科」ではありません。この名称を使う条件も決まっておらず、行政のチェックなどもありません。「予防歯科」は「むし歯や歯周病の予防に力を入れていますよ」という歯科医院のPR的な表現ととらえるのがいいでしょう。
実は「予防歯科」を表立って出さない歯科医院の中にも、予防に力を入れているところはたくさんあります。むし歯や歯周病の治療が終わった後に、「3カ月後にまた、来てくださいね」といわれる、いわゆる定期検診やメインテナンスのことですね。その日が近くなると案内のハガキをくれたり、メールや電話で連絡をくれたりするようなところです。
このことをふまえていただいたうえで、予防歯科(定期検診やメインテナンス)ではどのようなことをやるのか、紹介していきたいと思います。
まず、「PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・ティース・クリーニング)」があります。
これは歯みがきで落とすことのできないプラークや歯石を専門的な器具で取り除く処置です。
むし歯や歯周病の治療が終わった後は、「二度と同じような思いはしたくない」と皆さん、歯みがきなどのホームケアを頑張ります。
しかし、残念ながらどんなに頑張ってもセルフケアだけでは汚れを100%取り切ることができません。
「日本人の約7割が歯周病」の回でも解説しましたが、400人以上を対象にした有名な調査でメインテナンスを定期的に受けた群と検診だけを受けた群(つまり、セルフケアだけの群)とを比較したところ、6年後、歯肉の状態が悪化した人はメインテナンス実施群が11%だったのに対し、セルフケア群ではなんと89%だったのです。