歯みがきのコマーシャルなどでよく聞かれる「知覚過敏」という言葉。具体的にはどのような状態をさすのでしょうか。症状? あるいは病名なのでしょうか? 知覚過敏があったら歯科にかかったほうがいいのでしょうか? 『なぜ歯科の治療は1回では終わらないのか?聞くに聞けない歯医者のギモン40』が好評発売中の歯周病専門医、若林健史歯科医師に疑問をぶつけてみました。
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「冷たいものを食べると歯がしみる」「歯ブラシの毛先が歯に触れると痛む」……。知覚過敏の典型的な症状です。そして、知覚過敏を訴える人は夏場になると増えます。アイスクリームを食べたり、冷たいビールを飲んだりする機会が増えるせいでしょう。
知覚過敏は正確には「象牙質(ぞうげしつ)知覚過敏症」といいます。歯科の治療対象になるれっきとした病気です。
なぜこの病気が起きるのでしょうか。歯の構造は外から歯冠の部分は硬くて白いエナメル質、歯根の表面はセメント質で覆われています。その中のほうは黄色い象牙質、中心には神経や血管が通る歯髄の3構造になっています。象牙質知覚過敏症とはその名のとおり、さまざまな理由で象牙質が露出し(ただし、むし歯は除く)、そこが刺激を受けることでしみたり、痛みが起こったりするものです。
象牙質を顕微鏡で見ると表面に小さな穴がたくさん開いています。これは奥の歯髄につながる象牙細管という管です。象牙細管の中は水分で満たされています。象牙細管の入り口に歯ブラシが当たったり、風が当たったりしてこの水分がわずかでも移動すると奥の歯髄が刺激され、「イタタタッ!」となります。
また、甘い食べ物など飲食物によって糖分が入った場合は水分の浸透圧が変化するので、水が移動し、歯髄が刺激されて症状が起こります。
象牙質知覚過敏症の原因はさまざまですが、代表的なものの一つが歯周病です。歯周病が進み、歯ぐきが侵されるといわゆる「歯ぐきが痩せた」状態になります。
前述のように、歯根の周囲を覆っているのはエナメル質ではなく、セメント質、という組織です。セメント質は根尖部(歯根の先)までの象牙質を取り囲んでいますが、歯ぐき付近のセメント質は薄くてやわらかいので剥げやすく、すぐに象牙質が露出します。
このため、歯周病で歯ぐきが失われてしまうと、セメント質があらわになり、さらに、歯根の象牙質も露出し、象牙細管が刺激を受けやすくなるために知覚過敏が起こってくるのです。