この揚げパンを焼きパンで挟む……。つまりパンのパン挟みということになる。それぞれに味がついているわけではない。純粋に揚げパンと焼きパンである。
お好み焼きはソースをかけてあるから、大阪人の間では、定食になるのだが、焼餅油條の場合は、ソースがあるわけではない。人によっては、パンをパンで挟んだだけでは物足りないと、スクランブルエッグを挟んでもらう人もいるが。
この焼餅油條にはじめて出合ったとき、僕も戸惑った。パンをパンで挟む……こういうことをしていいのだろうか。
このパンの店は、台湾では豆漿と書く豆乳の店でもある。つまり焼餅油條は、豆乳とセットになった朝食なのだ。
頼むと焼餅油條をビニールに入れて渡された。焼餅はパリッとしているから、ぱらぱら落ちてしまう。皆、ビニールにくるんで食べている。僕もそれに倣い、焼餅油條にかぶりついた。食べ方はフランスパンに具が挟まれたサンドイッチを頬張る感じだ。ただ具がパンなのだが。
「ん?」
いける。油條はややしんなりとしている。それをパリッとした焼餅と一緒に口に入れると、油條が具の役割を演じることになる。味はパンなのだが。
そして豆乳を飲む。これが合う。豆乳に油條を浸して食べるより、一ランクあがった世界が待っている。なんだか楽しいのだ。
その話をすると、台湾人の知人は、飯●(米へんに團)もあるという。それは油條をもち米でくるんでいるという。台湾の人にとって、油條は具だったか。