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■地方PR系バズ動画だけでは解決できなかった“リアルな地方課題”

「絶メシリスト」をご存じだろうか。2017年秋に高崎市のシティプロモーションとして始まった、一風変わったグルメサイトのことだ。

 紹介されているのは、後継者が決まっておらず、このままでは「絶滅」してしまいそうな個人経営のメシ屋ばかり。現在、高崎市内にある55店舗の飲食店(※2019年5月末現在。一部、八百屋や和菓子屋もあり)がリスト入りされているが、「味」や「サービス」を評価基準としている一般的なグルメサイトとは違い、絶メシリストは「味わい」や「体験」を重視。さらに「後継者募集ページ」を設けるなど、徹底して「絶メシ」を守る姿勢を打ち出している。

 この取り組みが注目を集め、実際にリスト入りした“絶メシ店”を訪れる人が激増。JR高崎駅近くのある洋食店では「絶メシリストに掲載されてから、毎日のように行列が出来ている」(高崎在住の30代会社員)という。さらに、絶メシリストを見て後継者になりたいという若者からの問い合わせが……。中には実際に後継ぎ問題を解決した店もある。

 2018年には『絶やすな!絶品町グルメ 高崎絶メシリスト』(一般社団法人高崎観光協会著)として書籍化までされたこの取り組みは、同年には国内最大級の広告賞「ACC TOKYO CREATIVE AWARDS 2018」(以下、ACC)のマーケティング・エフェクティブネス部門で、最高賞となる総務大臣賞・ACCグランプリを受賞。一自治体のシティプロモーションがACCのグランプリを受賞することは「異例中の異例」(広告関係者)なのだという。

 大手広告代理店に務める男性はこう語る。

「2014年の第2次安倍改造内閣発足時から地方創生が叫ばれはじめ、広告業界でも地方PRのためのいわゆる“バズ動画”が量産された時期がありました。ただ、どのPR動画にも共通しているのは、それが地方の持つ課題を本質的には解決できていなかったこと。業界内外で『デジタルにおけるハコモノ行政だ』といった批判があり、クリエイティブの現場でも『もうバズ動画を作っている場合じゃないよな』という雰囲気が蔓延していました。そんな中で、現実の世界で影響を及ぼした絶メシリストがACCのグランプリを獲得したことは、いろいろな意味で象徴的な出来事だったように思います」

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地方に住む人たちのための施策でなければいけない