デジタル・ハコモノ行政ともいうべき地方PR動画とは一線を画すキャンペーン。一発の打ち上げ花火に終わらないことを心がけた、と語るのは同プロジェクト・プロデューサーの日野昌暢氏(博報堂ケトル)だ。
「依頼を受けた当初は悩んだこともありました。たとえばお店に取材交渉をする際、店主の方によく言われたのが『ウチは老夫婦で細々とやっているし、こういうものに出てお客さんが増えても対応しきれない』『今まで通り、静かにお店をやっていたい』というお言葉。また後継者についても『こんな儲からない仕事、子どもにやらせられないよ』なんて口々に言うわけです。たとえばこのキャンペーンをすれば、一時的にはお客さんは増えるかもしれない。でも、それは本当に店のためになるのか、地域のためになるのか、後継者問題が本当に解決するのか……そこの悩みはありました。それこそキャンペーンが一瞬の打ち上げ花火に終わっては意味がないし、お店のご主人を苦しめるだけでは本末転倒です。我々が目指したのは広告換算に表せない、本質的な効果。だからこそ、サイト内のコンテンツ作りでは継続的にお店が愛されるよう、ただのグルメ情報ではなく、お店の歴史や物語性を重視して作りこむようにしました」
ちなみに「今まで通り、静かにお店をやっていたい」と言っていた主人の店は、サイト掲載後から連日大賑わいで、大繁盛店となった。80歳近いというその店の主人は「毎日すごく忙しいし大変だけど、こうやって賑わってくれて嬉しい。今では出てよかったと思ってる」と笑顔を漏らす。
※後編記事「群馬県発の地方PR「絶メシ」がニューヨークでも絶賛された理由とは?」につづく