●将門公の不運と天下祭の関係

 ところで、日枝神社の山王祭は江戸時代から変わらず6月15日が祭礼日であるにもかかわらず、江戸時代には9月15日が祭礼日だった神田祭は現在5月半ばに開催となっている。この理由については、興味深い説があるのだ。

 三之宮の将門公(当時は二之宮)は、明治時代に一時本殿から外されたことがある。理由は明治政府から「天皇に弓を引いたものを祭ることは許さん」と言われたからである。氏子たちは泣く泣く境内に小さな社を建て将門公を遷座したのだが、納得していたわけではなかった。幕府からの資金援助が途絶えたこともあっただろうが、神田祭を10年間ほどやめてしまったのである。ようやく、明治17(1884)年に祭りを復活させたが、なんとこの年と次の開催(1886年)の祭礼は台風と大雨にたたられ、山車の多くが破損してしまった。以降、台風の季節である9月開催はやめ、5月に本祭が行われるようになったのだとか。ちなみに、将門公が末社から本殿に戻られたのは昭和59(1984)年になってからのことである。

 神田明神の一・二之宮の祭神の別名は、だいこくさまとえびすさまである。

 だいこくさまといえば縁結び、えびすさまといえば商売繁盛。境内には2柱の大きな像も鎮座していて、これらの御利益を求めて昔から多くの参拝者が訪れる人気の神社である。

 加えて昨今では海外からの参拝者も劇的に増えた。それは「ラブライブ! 」に始まるアニメーションとのコラボグッズを求めて訪れる若い観光客が激増しているためである。関連したグッズは、御朱印帳や絵馬、カプセルトイにも及び、「ご注文はうさぎですか?」「バンドリ! ガールズバンドパーティ!」などコラボ作品は増え続けている。将門公の絵馬も劇画チックな仕上がりだ。

 古くは天下祭として日本中に名を知らしめた神田明神は、銭形平次で一世を風靡したのち、今はアニメの聖地として世界中から人々を呼び寄せているパワースポットなのである。(文・写真/ブログ「東京のパワースポットを歩く」鈴子)

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