日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、2人の女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「再流行したインフルエンザ」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。
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平成が終わり、令和という新たな時代が幕をあけましたね。10連休となった今年のゴールデンウイークも終わり、新たな気持ちで仕事に復帰している方も多いのではないでしょうか。
4月中旬、熱はなく、嘔吐(おうと)症状のみで受診した方がいました。インフルエンザも、ほぼ見られなくなっていた頃でした。胃腸炎だろうと思っていたのですが、診察中も嘔気がひどかったため横になっていただくことに。看護師さんのすすめもあり、念のためインフルエンザ検査をしたところ、なんと「インフルエンザB型」だったのです。B型インフルエンザの場合、嘔吐や下痢がみられることもありますが、嘔吐の症状のみでインフルエンザを認めたことに、私は驚きを隠せませんでした。
このケースを経験した前後から、インフルエンザと診断する方が増えてきていました。高熱の方もいれば、花粉症の症状がまた再発したのかと思って受診したらインフルエンザだった、という方もいました。「検査をしましょう」というと、「インフルエンザはまだはやっているのですか」という方も多かったのですが、インフルエンザであるという検査結果が出た時の患者さんの驚きようは忘れられません。私も、去年とは違う流行の仕方を肌で感じていました。
そんな矢先、インフルエンザが東日本を中心に再流行しているというニュースが飛び込んできました。「いまになってなぜ流行しているの?」と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
厚生労働省は4月26日、発生動向を把握するために定点医療機関として指定されている全国約5,000か所の医療機関から報告された1医療機関あたりのインフルエンザの報告数が、4月15日から21日までの1週間で2.54人であったと発表しました。4月1日から7日の週には1.46人まで減少していたものの、8日から14日の週には1.67人と、2週連続で増加を認めていたことがわかったのです。
インフルエンザ患者数は、約 9.6 万人と定点医療機関からの報告をもとに推計されています。ちなみに前週の推計値は約 6.5 万人であり、東京や京都といった都市部をはじめ、39もの都道府県で患者数は増加。保育所や幼稚園、小学校や中学校、高等学校において休校、学年閉鎖や学級閉鎖をした施設は301施設に上り、昨年の155施設と比べても、流行していることがうかがえます。