しかし、現代の子どもが、ほら貝を吹いたうえで鳥を殺すなんてことは絶対に起きないでしょう。そこを、現代バージョンとして「動物をいじめる」ことで、地獄では「火をふく鳥に焼かれる」と、リメイクしています。

 生きていくうえでは、とりあえず「何をしてはいけないか」を知っておいてもらうことが大切です。大人になっていけば、外見を指摘されて傷つき、「自分はしないように努めよう」と自ら思う日がくるでしょう。

 さらには、「うそも方便」という言葉のとおり、うそをついたほうがよいのでは?と考えるべきケースにも衝突します。しかし、それは応用問題です。基本問題が解けなければ、応用問題は解けません。『いちにちじごく』に載っている「してはいけないこと」は、ハッキリ言って、基礎も基礎である、九九を覚えるレベルのこと。ですから、「まずは意味を考えずに丸暗記」でいいのです。実際に「5円玉が4枚あるから20円払える」という経験は、年齢を重ねていくにつれ、自然と通っていく道でしょう。

 息子は歯磨きが嫌いなので、個人的には「夜に歯を磨かない子がいく地獄」があればいいな、と思います。とりあえず、虫歯になった歯の画像をみせることで磨かせていますが……誰か、日常の細々したこと(夕飯で野菜だけ残すとか、あいさつをしないとか)に対しての、地獄絵本を作ってくれないかなあ、と。まあ、歯を磨かないだけで地獄に落とされるのも、考えてみれば理不尽な話ですけれども。

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杉山奈津子

杉山奈津子

杉山奈津子(すぎやま・なつこ) 1982年、静岡県生まれ。東京大学薬学部卒業後、うつによりしばらく実家で休養。厚生労働省管轄医療財団勤務を経て、現在、講演・執筆など医療の啓発活動に努める。1児の母。著書に『偏差値29から東大に合格した私の超独学勉強法』『偏差値29でも東大に合格できた! 「捨てる」記憶術』『「うつ」と上手につきあう本 少しずつ、ゆっくりと元気になるヒント』など。ツイッターのアカウントは@suginat

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