トランスフォーマーは、男の子の夢のおもちゃですね。
 リアルなフォルムの自動車やバイクや飛行機が、変形してロボットになる。自分が子供の頃なら鼻血が出そうなくらいカッコいいギミックです。
 スピルバーグとマイケル・ベイが組んだ『トランスフォーマー』は、その男の子の夢がギュウギュウに詰まった映画でした。
 冒頭、米軍の駐屯地に正体不明のヘリが一機着陸すると人型に変形。あっという間に軍隊を全滅させるシーンでもうハートをわしづかみにされました。
 リアルな軍隊の中に、ヘリが変形する巨大ロボという荒唐無稽極まりないものをぶち込んで、それでも絵空事にならない。現実にそういうメカが存在し米軍と交戦していると客に思わせるだけの画面を作り上げる技術力とセンスに感服しました。
 マイケル・ベイだけなら大味爆発ドッカンドッカンだけで終わりそうな所を、スピルバーグが細かい気配りをしてディティールまでこだわった(以上の役割分担は中島の脳内妄想)、大味だけどちゃんと出汁も効いていて、「ああ、こういうことやらせるとハリウッドにはかなわねえなあ」と圧倒された作品でした。
 
 シリーズ第二弾『トランスフォーマー:リベンジ』がたった一度だけ試写会が行われるということで、いそいそと早朝の六本木まで出かけていきました。
 早朝の試写会は『スターウォーズ・ジェダイの復讐』以来だから26年ぶり。うお、今、ネットで調べたらいつの間にか『ジェダイの復讐』が『ジェダイの帰還』にタイトル変更している。復讐心に燃えていた人も、心が静まり黙って帰ってくるようになるくらいの歳月が経ったという事ですね。嘘だけど。
 もともとルーカスは「正義の味方ジェダイが復讐はしないよね」みたいなことを言ってたから、いつの間にか直してたんですね。

 ああ、どんどん話が横滑りしていく。
 とにかくそのくらい久しぶりの早朝試写会。
 携帯は袋詰めにされるは、ボディチェックはされるはという厳重な警備体制。上映中もスタッフが暗視カメラで客席を見ていると言うからおおごとです。
 世界最速の試写会だから、盗撮でもされて世間に映像が出回れば多くの人間のクビが飛ぶという事でしょう。
 寝不足でハイテンション気味なところにこの物々しさ。なんだか大変な物を見に来たような気になってワクワク感がとまりません。観るのはトラックがロボットになる映画なんだけどさ。

 劇場に入ると、今石洋之(いまいしひろゆき)さんが待っていました。ニコニコしています。
 樋口真嗣(ひぐちしんじ)さんに頼んで、僕と今石さんのグレンラガンコンビも、試写会に潜り込ませてもらったのです。
 しばらくすると当の樋口さんもやってきました。やっぱりニコニコしています。
 多分僕もニコニコしていたのでしょう。みんな小学生の顔です。ボンクラ小学生が、夏休みに楽しみにしていた「東映まんがまつり」を観に来たような顔です。
 そして始まった映画は、一作目以上に男の子の夢の映画でした。

 画面上はものすごい情報量なのにストーリー的にはほぼ何もない。それでも見ている間は猛烈に楽しい。もうどれが人間でどれがメカでどれがCGでどれがロケかわからない。話だって、よく考えてみたらつながってないんじゃないか。いや、むしろそれがいいそれでいい。だってこれは夢なのだから。ボンクラ小学生の見たい物を猛烈に進んだ技術で見せている。まさに技術の無駄遣い。まさに才能の無駄遣い。
 でも、それもまた映画でしょ。

 終わった時、樋口さんも今石さんも僕も、来た時以上にニコニコしていました。
「いやあ、男の子でよかった」
「あと6時間くらい観ていたかった」
「バンブルビー今回無口でかっこいいね。『大追跡』の沖雅也みたいだ」
「ジェットファイアーじいさん最高。『グラン・トリノ』のイーストウッドと並んで今年の頑固爺ツインズは決まり」
 口々に出る感想の頭の悪い事。まるで三バカロボ大将。
 でも幸せ。
 そんな映画でした。

 うーむ、ほめてるように聞こえますかね。
 猛烈にほめてるんですが。
 まだ公開前なんで、あまり中味に触れないように書いてるから尚更わかりにくいかな。
 
 ちなみにこの三バカロボ大将、今週の週末(6/13)『劇場版天元突破グレンラガン・紅蓮篇』と『螺巌篇』の二本立てオールナイトのトークショーに出ます。
 そこでもまた、男の夢だだ漏れなトークを繰り広げる事でしょう。