
人工透析を受ける患者数は年々増加しており、2017年末の時点で33万4505人に上り、新規透析導入患者は4万959人と報告されています。医療の進歩により、透析導入後の患者の予後は大きく改善していますが、課題もあるといわれます。日本透析医学会理事長の中元秀友医師の監修のもと発売された、週刊朝日ムック『「このままだと人工透析です」と言われたら読む腎臓病の本』では、中元医師が透析医療の現状と課題、展望について語っています。
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現在、わが国におけるCKD(慢性腎臓病)の患者数は約1330万人おり、国民の10人に1人が慢性腎臓病を患っていることになります。しかも将来、人工透析が必要になる可能性の高い末期腎不全患者の割合が増えているという現状があります。
この背景には、慢性腎臓病は、重症化するまでほとんど自覚症状がみられないという特徴があります。気づかないうちに進行し、体調に変化が現れて受診したときには、すでに人工透析が必要な状態にまで悪化しているということも珍しくありません。できればそうなる前に、早期発見・治療できることが理想ですが、実際は困難なことも多くあります。
■腹膜透析の普及が課題の一つ
人工透析を受ける患者数も年々増加しており、2017年末の時点で33万4505人に上り、新規透析導入患者は4万959人と報告されています。
人工透析患者が増加している理由として、社会の高齢化や、腎不全の原因疾患である糖尿病の増加などが挙げられます。糖尿病は腎不全の原因疾患として最も多く、17年の新規透析導入患者の原疾患のうち、糖尿病性腎症が42・5%を占めています。
医療の進歩により予後が良好な症例が増え、透析導入後に長生きできる人が増えたことも人工透析患者増加の要因のひとつと考えられます。長い人では40年以上透析治療を継続している人もおり、治療をしながら職場復帰し、元気に生活している人も多くいます。
このように、予後が良好になったことは喜ばしいことですが、日本の透析医療には課題もあります。そのひとつが、血液透析と比較して腹膜透析の普及率が低いことです。
透析療法には、「血液透析」と「腹膜透析」の2種類があります。日本では、実施されている透析の多くが血液透析で、腹膜透析が少ない現状があります。透析を受けている患者さん33万4505人のうち、腹膜透析を受けている人は9090人、わずか2・7%です。
腹膜透析には、血液透析と比較して通院回数が少なく、拘束時間も短いため自由度が高く患者さんの負担が少ないこと、残存腎機能の維持やQOL(生活の質)の維持が期待できるなどのメリットがあります。