


2006年に出した前作『天才になりたい』を加筆修正して、2018年7月に出された山里亮太著『天才はあきらめた』。13万部突破を記念して紀伊国屋書店新宿本店で行われた、山里亮太さんと編集担当・大坂温子の対談の様子をリポート。今回は、タイトル決定の裏話のほか、山里さんが癒されたという書店営業の実態に迫ります。
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■新たなタイトル誕生のきっかけ
大坂(以下「大」):今回のタイトルは、山里さんに考えていただいたんです。
山里(以下「山」):でも、最初にちょっとしたぶつかり合いはあったんですよね。僕の初代マネージャーで、前作『天才になりたい』のきっかけをつくってくれた片山さんという人がいるんですけど。その人が「『天才になりたい』というタイトルは変えてほしくない」と言っていて。でも大坂さんは、このタイトルに関してだけは「変えたい」と。
大:ここまで頑張って加筆してくださって、全く新しいものになっているので、新しい印象をどうしても伝えたかったんです。ただ単に文庫化したんじゃなくて、「新しくなった」ということを打ち出したくて。
山:吉本の本社の狭い会議室で、ちょっとギスギスしながら「タイトル会議」をしましたよね。でも『天才になりたい』を超えるタイトルがなかなか出てこない。煮詰まって、1回トイレに行った時にフッと浮かんだんです。「天才はあきらめた」という言葉が。「なりたい」って言ってたら、「まだオレは天才になれる」って思っちゃってるなって。それって今の状況、実力を考えた時におかしいぞって。今の自分は「天才」という言葉に対してどういうポジションなんだろうと考えた時に、「オレあきらめてるわ」と思った。それでトイレから戻って、「天才はあきらめた」ってどうでしょう、と大坂さんに言いました。そうしたら、すごい! それですね、みたいな感じになって決定しましたね。
■山ちゃんの醜い部分を大増量
大:今回の文庫化で一番変わったのは、しずちゃんとの確執のエピソードが増えたりとか、(復讐の言葉を書きつらねた)ノートをそのままのせていたりとか、とにかく山里さんの醜いところがすごく増量されているところです。
山:醜い? 心の中のいろいろな葛藤というか、ね……?
大:よく書けましたね?
山:大坂さんが、隠さず毒は多めに、と言ったんじゃないですか! それで、「じゃあまずはブレーキ踏まずに自分の考えること全て書いてみよう」と思って。そうしたら編集の方で、これはちょっと印象よくないとか、これはあまりいい目で見られないからとか、取捨選択してくれるのかと思ったら、全部そのままのせちゃった。だから粉薬をそのまま飲んでむせてるんですよね、みんな。オブラートに包んでないから。でも、それが結果よかったわけですけど。
大:ノートもぜひのせたいとお願いしました。