前立腺がんは、がんが前立腺内にとどまる初期の段階で、悪性度が低いものであれば、手術、放射線治療のどちらでも治療成績はほぼ変わらない。患者にとって朗報ではあるが、治療法選択に迷う一因になっている。東京医療センター泌尿器科医長の斉藤史郎医師は次のように話す。
「手術だけ、放射線治療だけというのではなく、どちらもバランスがとれた症例数をもつ病院がいいでしょう。治療法の選択肢が多く、実績を積んでいるほど、最適の治療が受けられます」
それぞれ年間50例以上ある病院なら信頼がおける。藤田医科大学病院副院長で腎泌尿器外科主任教授の白木良一医師は次のように話す。
「前立腺がんは、医療機器の進歩で、より的確な診断が可能になりました。症例数が多い病院では、新しい機器を採用していることが多いと考えられます。その点でも、実績の豊富な病院を選ぶことをおすすめします」
治療の合併症として、手術では尿漏れや性機能障害が、放射線治療では排尿困難や尿意切迫感などの排尿障害が起こり得る。合併症の症状は、手術では手術直後がもっとも重く、徐々に回復していく。
放射線治療では多くの合併症は一過性のものだが、治療から数年たって、出血や排尿障害があらわれることがある。斉藤医師は言う。
「ロボット手術になってから、神経や括約筋の温存率が高くなりましたが、それでも合併症ゼロというのは難しいといえます。放射線治療も排尿や排便にかかわる一時的な合併症が出現することがあります。合併症の可能性と術後の生活をよく考えて、治療を選択することが大切です」
日本泌尿器科学会と日本泌尿器内視鏡学会が定める「泌尿器ロボット支援手術プロクター認定制度」のプロクター(手術指導医)認定を医師がもっているかどうかも、判断材料になるだろう。
超低リスクな患者には、治療開始まで時間的に余裕がある、「PSA(腫瘍マーカー)監視療法」がおこなわれる。
「監視療法は50代、60代の若い世代にも多く適応されています。治療をいたずらに急ぐのではなく、経過観察しながら、適切な時期に治療を開始してくれる医師を選んでください」(白木医師)
(取材・文/別所文)