大竹しのぶ (c)朝日新聞社
大竹しのぶ (c)朝日新聞社
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矢部万紀子(やべまきこ)1961年三重県生まれ、横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』
矢部万紀子(やべまきこ)1961年三重県生まれ、横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』

 やれ視聴率の10%割れが並みの速さでないとか、喫煙のシーンが多すぎると抗議されてさらなる逆風だとか、NHK大河ドラマ「いだてん」があれこれ取りざたされている。

 だが、私は言いたい。「いだてん」には、大竹しのぶがいる、と。

 3月2日に放送された第9回「さらばシベリア鉄道」は、主人公の金栗四三(中村勘九郎)ほかの日本選手団がひたすらストックホルムを目指す回だった。東京→敦賀→ウラジオストック→セントピーターズバーグ→ストックホルムの8000キロ。鉄道と船を乗り継いでの17日間の旅。

 選手団は四三に加え、監督の大森兵蔵(竹野内豊)とその妻(シャーロット・ケイト・フォックス)、もう1人の選手・三島弥彦(生田斗真)。その4人のシベリア鉄道での様子が主に描かれる。団長の嘉納治五郎(役所広司)は渡航許可が下りず、東京でイライラしている。その様子も描かれる。

 が、私が一番心惹かれたのは、シベリアでも東京でもなく、本のシーンだった。大竹しのぶと綾瀬はるかによる短いシーン。大竹のセリフの奥行きの深さに感動し、その演技についていく綾瀬に感心した。これからの「いだてん」の流れが見え、脚本の宮藤官九郎の巧みさに舌を巻いた。

 と、絶賛したところで、説明を。

 綾瀬演じる春野スヤは、のちに金栗四三の妻になる。「いだてん」のキャストが発表された時から、NHKはそう明らかにしていた。

 第2回から登場したスヤは、四三の住む熊本の小さな村の医者の娘で、ハイカラな女学生。四三に惹かれていることはわかるのだが、卒業後には隣村に嫁ぐと折に触れて話題になる。相手は庄屋の跡取りで、破格の名家である、と。

 四三は東京に行き、オリンピック選手に選ばれる。ストックホルム行きの費用に困り、兄に援助を依頼する。困った兄がスヤの実家に相談に行く。大金過ぎてとても出せないと断る父に、自分の嫁ぐ池部家なら出せるのではないかとスヤが言う。

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出資を決めるのが、大竹しのぶ演じる…