ほんのわずかな時間だから、その時だけ米軍が空域通過を認めて、その部分の管制権を日本側に認めればよいだけの話なのだが、それでも米軍は、民間機の横田空域通過をなかなか認めず、これでは、オリンピックに間に合わないのではないかという懸念が生じていた。そこまでが、昨年10月のコラムを書いたときの状況だ。

 今回明らかになったのは、その後、日米間で調整を進めた結果、ようやく米軍が折れて、日本側が策定した新ルートを認め、さらに、飛行の安全のため、民間機が通過する数分間の管制を日本側で行うことを認めたということだ。

 国土交通省は、これを誇らしげに発表した。日米地位協定があるのに、交渉で米側の「譲歩」を勝ち取ったかのように宣伝したかったのであろう。もしかすると、交渉をしていた国交省や外務省などの官僚たちは、本気で、「俺たちはよくやった」と自画自賛しているのかもしれない。なにしろ、地位協定に反する内容を米側に対して持ち出すことなど、考えも及ばないというのが、対米服従を貫く日本の官僚たちの常識だったからだ。

 だからこそ、政府の発表は自信に満ちたものだった可能性が高い。それを真に受けたのか、あるいは安倍政権への忖度なのか、各紙は、記事の大きさは控えめながら、新ルートの開設と管制権を日本政府がアメリカから勝ち取ったという趣旨の記事を掲載した。

 この短い記事を見た読者は、地位協定があるにもかかわらず、日本の言い分がそのまま通ったのかと思ってしまうだろう。

 もちろん、私は、わずか数分間の管制権を勝ち取ったくらいのことを成果だと考えるのはおかしいと思った。本来は、地位協定そのものの変更の交渉をすべきなのに、そんなことは最初からあきらめている日本政府の姿勢をもっと問題にすべきだとも考えたが、そうした論考はどこの新聞にも出ていなかった。

 ところが、その報道からわずか10日後の2月9日に、日本経済新聞に面白い記事が出ているのを見つけた。

その見出しは、

「羽田増便、半数は日米路線 両政府が最終調整」というものだ。

 この記事によると、1日当たりの増加分である約50便のうち、24便を日米路線に当て、日米の航空会社に同数配分することになりそうだというのだ。日経は、「当初、日米路線への増枠分の配分は約50便のうち20便弱程度との見方もあった」とも報じている。

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米国を優遇し過ぎではないのか?