7月28日、『五右衛門ロック』の東京千秋楽を新宿コマ劇場で迎えました。ご存知の方も多いと思いますが、新宿コマ劇場は今年いっぱいで閉館です。

1956年に作られたこの劇場は僕よりも年上。昭和の娯楽の殿堂としてにぎわった歴史のある小屋です。

天井を見上げると塗料がはげていたり、床のカーペットもはげかけていたりと、老朽化で取り壊すのも、やむなしかなあとは思うのですが、しかし、その分、歴史の重みもそこかしこにありました。

今回、本当に満員御礼で、暑い中当日券にも多くの方に並んでいただき、しかもその全員にはご覧いただくことが出来ないという状態で、有り難くもあり申し訳なくもありという気分ではあったのですが、劇場付きのおじさん達が「こんな風に若いお客さんでにぎわってるのは、百恵ちゃん以来だねえ」とニコニコと言うのです。百恵ちゃんって、当然あの山口百恵ですよ。もう引退して28年ですよ。僕が観たくても行けなかった百恵ちゃん祭りの話ですよ。その時からいらっしゃるんですね。

三階までの楽屋を移動するエレベーターは今どき珍しい人間による操作。ちゃんとエレベーター番のおじさんがついてるんですね。舞台袖にある姿見の鏡には「美空ひばり公演20周年記念」という寄贈の銘があるし。

昔の話を聞いていると、この劇場は、美空ひばりさんのために作られたものが随分あるようです。前述のエレベーターや両袖の花道の他、三階の楽屋の奥に、舞台と客席が見える小部屋があるのですね。かつては、ここで、美空ひばりのお母さんが、毎回彼女のショーをチェックしていたのだとか。

東京千秋楽、僕はその由緒ある部屋から、本番を見させてもらいました。かつてこの劇場が最高ににぎわっていた時代の空気をちょっとだけ感じて、感慨深かったです。

他にも、劇場が出来た時からの演目の台本(エノケンなど)や、昔のコンサートや歌謡ショーをライブ録音したオープンリールなど、昭和の娯楽の貴重な記録も保管されているそうです。

劇場が壊されても、こういう記録だけはきちんと保管され続けて欲しいと切に願います。