「大鶴弁護士が話したことは一つ一つが説得的で、検察への直接的な批判は避けた。今後の裁判を考えると(検察との全面対決を避けたことは)賢明な判断だった思う」
弁護側が公式に反論を開始したことで、今後は裁判の行方に注目が集まる。一方、世界では日本の司法制度に批判的な意見が多く出ている。前出のアデルシュタイン記者は、こう話す。
「東芝の粉飾決算では誰も逮捕されていません。にもかかわらず、ゴーン氏はこんな微罪で逮捕された。これはとてもおかしなことです。しかも、日産は検察に情報提供をして、会社建て直しの恩人であるゴーン氏を追い落とした。これは、弟子が(師匠を)逮捕しろと言っているようなもので、義理が立っていない行動です。」
アデルシュタイン記者は、日本での生活が長く、国内メディアで司法担当をしたこともある。だからこそ、今回の事件が国際社会で日本の地位を貶めるのではないかと危惧している。
「国際社会から、ゴーン氏は外国人だから逮捕されたと思われても仕方ありません。これでは、外国人で日本で社長をやりたいと思う人はいなくなります」
ゴーン氏の弁護側は、外国特派員協会を通じて、世界に向けて無実を主張した。一方、特捜は世界から起きている批判に何も答えておらず、日本の司法制度に対して世界の目はますます厳しくなっている。アデルシュタイン記者は、こうも話した。
「問われているのは日本の司法制度だけではありません。この事件では、日本社会の“品格”が問われています」
(AERA dot.編集部・西岡千史)