民間事業者が運営権対価の一括払いを選択すると、本来は必要のない資金調達をして金利を払わなければならない。最終的にはその負担は、水道利用者から徴収せざるをえない。
実は、金融機関からの要望は官邸に上がっていた。しかもそのことは、福田氏自ら要望している。15年の産業競争力会議で、福田氏は2社の金融機関にヒアリングをした結果として、繰上償還についてこう話している。
<やはりこれ(繰上償還のこと)ができないと、民間の金融機関からすると、コンセッションが広がってもほとんど融資機会がない。運営権対価が分割で払われてしまうだけになる>
この仕組みを最近になって知った前出の財務省関係者は、こう話す。
「自治体に水道コンセッションの参入を促すのなら、財務省としては国の一般財源から『PFI推進のため』という理由で補助金を出せばいいではないかと主張していた。それも官邸で議論されたのかどうかもわからなかった。そうですか。(繰上償還の目的は)『一括払い』にあったわけですか……」
「最強官庁」と呼ばれる財務省をすら煙に巻く、竹中氏と福田氏。そのつながりは、福田氏の補佐官辞任後も途絶えていないという見方が支配的だ。実際、福田氏は現在も竹中氏がセンター長を務める東洋大学グローバル・イノベーション研究センターに客員研究員として所属し、同大国際学部の客員教授を務めている。
AERA dot.は、繰上償還制度導入の真意を確かめるため、竹中氏に取材を求めたが「海外出張中のため、取材をお受けすることが叶いません」と回答した。福田氏には携帯電話に取材を申し込んだが、応答はなかった。
内閣府の民間資金等活用事業推進室(PPP/PFI推進室)は、繰上償還制度導入の経緯について「自治体から要望があった」と説明。金融機関から出た意見の影響については「コンセッション事業者には金融機関も含まれるので、そういった意見はあったかもしれない」と回答した。ただ、制度導入については「自治体の参入を促すうえでベストな仕組みと考え、財務省も含めて閣議決定で了承された」と話した。