日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、2人の女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は、赤ちゃんの「うつぶせ寝」について、自身も1児の母である森田麻里子医師が「医見」します。
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赤ちゃんが寝返りをするようになると、お布団に置いた瞬間に寝返りをしてしまい、仰向けで寝かせられない、と悩むママ・パパは多いです。確かに、元気な赤ちゃんが明らかな原因がないのに睡眠中に突然亡くなってしまう病気、乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクの一つとして、うつぶせ寝があげられています。うつぶせになって寝てしまうのは心配になりますね。
SIDSは「旧約聖書」にも記載があるほど古くから存在する病気ですが、病気として名前がついたのは1960年代です。原因はまだはっきりしていませんが、無呼吸からの覚醒反応が遅延することが関係していると考えられています。外的な要因により呼吸が妨げられる窒息とは異なり、赤ちゃんが持っている素因に、リスクとなる環境因子が重なって起こるようです。
■柔らかいブランケットや枕に注意
リスク因子としては、赤ちゃんの暖めすぎや親の喫煙、非母乳栄養などがありますが、最も大きいのは睡眠時の姿勢です。1980年代後半からうつぶせ寝との関連が明らかになり、1990年代になって仰向けで寝かせるよう注意喚起されるようになりました。うつぶせ寝がなぜ覚醒反応を遅延させるのかはわかっていませんが、欧米ではうつぶせ寝の減少に伴って、SIDSも劇的に減少しています。他にも母乳育児やたばこを吸わないことがSIDSの発生率を低くすることが研究からわかっているため、厚生労働省もSIDSの予防として、
(1)1歳になるまでは寝かせる時は仰向けに寝かせる
(2)できるだけ母乳で育てる
(3)たばこをやめる
といったことを推奨しています。