「Kumar、Patel、Guptaといった名前を見かけることが多く、調べてみたら問題を作成するETSの人がヒットしました。巨大な機関ですから当たり前のことかもしれませんが、面白いですよね。サッカーのワールドカップドイツ大会があった時はNarasaki(楢崎正剛)やOguro(大黒将志)も出てきました」

 問題作成者は意外とおちゃめ? どれをとっても独特なTOEICの世界だが、近年話題になるのは「職場環境にまつわるものばかり」だとTEX先生は感じているという。

「ネットで話題になるのは、TOEICに出てくる会社がホワイトだというところばかり。みんな日常的に嫌なことがあって、ストレスが溜まっているからこういう世界が面白いんでしょう。問題を作るには何かを起こす必要があります。でも、様々な配慮をした結果不思議な世界になってしまった。現代と逆行している、清く正しい世界ですね」

 TOEICの世界に行けるならば、今すぐにでもワープしてみたい。そんな思いがよぎる。ストレスフリーな世界を夢想する記者に、TEX先生は「TOEICの世界も怖いかもしれませんよ」とぽつりとこぼす。

「毎日淡々と過ごさなければいけないし、周りはいい人ばかりだけど、批判や悪口も出てこない。SFじゃないけれど、裏TOEICの世界があるかもしれません。何か悪いことをした人には『ご退場いただきます』なんてね」

 ハハハ。ジョークに同席した編集者とひと盛り上がり。TEX先生も笑いながら、こう続ける。

「2010年の試験では市バスの運賃値上げに抗議し、決起を訴える文書を新聞に投稿した人が出てきました。TOEICの試験では何かを批判したり、ネガティブな内容が出てくることはないので『勇者だ』と思ったんですね。ですが、その後の消息は不明です。その先でどうなったのか受験者の我々には知る由もありません」

 まさかのミステリー展開に冷や汗ダラダラ。どうやら、知らなくていい世界もあるようだ。(AERA dot.編集部・福井しほ)

■TEX 加藤(テックス・かとう)
1967年大阪府生まれ。神戸市外国語大学外国語学部英米学科卒。約20年の一般企業でのサラリーマン生活を経て、2010年TOEIC TEST講師に転身。現在、専門学校神田外語学院で専任講師を務める。2011・12・13年のTOEIC公開テスト全26回、すべて「990点」。新形式移行後も990点を連続取得。これまで通算103回TOEICを受験し、990点取得は91回を更新(2018年11月試験現在)。英検1級。累計100万部を突破した『TOEIC L&R TEST 出る単特急金のフレーズ』など著書多数。

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