そういえば、以前取材で出会った国際派の弁護士さんが、なかなかにユニークな金銭哲学の持ち主だった。彼はお金持ちなのだが、海外を飛び回るときも飛行機は絶対にエコノミーの格安チケット。ホテルは中級ホテルの一番安い部屋で、食事にもほとんどお金を掛けない。その理由を「僕は結果が同じものにはお金をかけない」と。つまり、ファーストクラスであろうとエコノミーであろうと同じ時間に到着する。事故のリスクも同じ。寝るだけのホテルだから、ある程度の清潔さとセキュリティがあれば同じ。食事も必要なカロリーを摂取できればいい。という考え方らしい。「でもスーツや時計、靴などはお金をかけている」というのは、身に着けるもので判断されることがあるので結果がかわるから、というのだ。うーむなるほど…、とは思ったが、この人とはお互いに付き合えない。
先日、友人の大金持ち氏とご飯を食べているときに素敵な発言を聞いた。「僕はある時期分不相応な大金を稼がせてもらったので、それは神様が『人のために使いなさい』ということで与えられたと思っています。だから、寄付をしたり、人を助けたり子供たちを教育することに使いたいのです」。そして彼はそれを実践している。お金持ちがみんなこうならいいのに。もし私に万が一大金が舞い降りたら、そういうふうに使いたい。そう夢想する人は少なくないはず。でも、実際、いざお金を持った時、どれほどの人が本当にそれを実行できるのかは疑問だ。何億も横領した女会社員がブランド品に2億つぎ込んだりした事件などを聞くにつけ、お金の使い方に性格や品性が出るのは間違いない。金は人生の縮図だ。
大王製紙の前会長で106億円を会社から不正に引き出しカジノで使っていた井川意高氏が自らの実体験を描いた『溶ける 大王製紙前会長井川意高の懺悔録』は、同じ人種だったトウチャンを知っている私にはひりひりするような面白さだった。でも、使っちゃいけないお金が「溶ける」という瞬間、引き返せない泥沼の人間の姿がひりひりと描かれているので、一種のマネー・ホラーとしても読んでみてほしい。
今回のトウチャンの話だって、ほとんどの女性が「なんでそんな男と一緒にいたの?」と呆れ果てていることだろう。書きながら、私もそう思います、はい。