「説明会に参加した女子生徒によると、希望しても不合格になる場合があること、追加合格した受験生がその後辞退した場合、次の順位の人に回るのではなく31年度入試の募集枠に回されること、補償に関する説明がなかったことに対しての不満の声が多かったようです。女子生徒自身も、今回の説明会にいい印象を持てないうえ、希望しても通らない可能性があるため、入学希望を出すかどうかで悩んでいます」(メディカルラボ・可児さん)

 この説明会のときには、自分の順位がわからず、入学希望を出しても不合格になる可能性があった。このことに対する不満の声も多かったためか、その後、対象者には順位が記載された通知が再度届いた。前述の日本医科大生の順位は5位以内だったという。
 
 医学部専門予備校YMSの小柴允利講師長によると、昨年の秋に東医の推薦入試を現役で受けた女子生徒にも通知が届いた。18年度の推薦入試の対象者は9人で、追加入学を認める上限の人数も9人。同年度の一般入試では全員が入学を希望した場合、対象者の約半数しか合格しないが、推薦入試では「希望する」に○をすれば、合格できる状況だ。

 ところが、その女子生徒は進学を希望しないという。

「東医が第一志望でしたが、現在は都内の医学部に進学しています。通知が届いたあとに本校に来ましたが、『一年次の課程を再度やり直すことは留年したことに等しいため、東医への入学を希望しない』と話していました」(小柴さん)

■通っている大学をやめて東医大へ?

 現在、浪人中の受験生が東医大に進学する場合には他大学に影響はないが、現在他大学に通う学生が東医大に進学するとなると、その大学は学生が減るという問題が生じる。

 また、来年の東京医科大学の入試の募集人員は、定員から追加合格者の人数を引いた数となる。来年の受験を考えている受験生にとっては、募集人員が何人になるかは大いに気になるところだ。多くの塾・予備校では、募集人員が決まってから出願を検討するよう指導しているという。

 取材した多くの予備校や塾の関係者によれば、「通知をもらっても、実際に入学する例はそれほど多くないだろう」と予測する。東医大は受験生に人気がある伝統校なので、「東医に合格する力がある受験生なら、他の医学部に合格して進学しているだろう」というのがその理由だ。

 実際に、メディカルラボ、YMS、ビッグバン、ウインダムなどの医学部専門予備校の卒業生で、東医から「入学意向確認書」が届いた人たちは、国立の浜松医科大学、私立の日本医科大学、昭和大学、杏林大学、東京女子医科大学、聖マリアンナ医科大学などの医学部に進学しており、東京医科大学に入学する意思はないそうだ。

 なかには、前述の女子学生のように、現在通っている大学をやめて東医に進学するか迷っている人もいる。一方、現在浪人中だが、「浪人して一生懸命に勉強してきたので、東医よりも学費が安い難関大に合格して、見返してやりたい」と語る生徒もいるという。

 あと2カ月で本格的な受験シーズンに突入する。一刻も早い大学側の正確な情報公開と受験生への対応が望まれる。(文/庄村敦子)