箸墓古墳上空から。2013年2月20日、研究者による立ち入り観察が行われた (c)朝日新聞社
箸墓古墳上空から。2013年2月20日、研究者による立ち入り観察が行われた (c)朝日新聞社
箸墓古墳の立ち入り観察の様子 (c)朝日新聞社
箸墓古墳の立ち入り観察の様子 (c)朝日新聞社
情報公開請求により判明した1968年の箸墓古墳の発掘調査を記事化した(2012年9月12日朝日新聞大阪本社版朝刊) (c)朝日新聞社
情報公開請求により判明した1968年の箸墓古墳の発掘調査を記事化した(2012年9月12日朝日新聞大阪本社版朝刊) (c)朝日新聞社
大山古墳南西上空から。2018年10月下旬、外提部分で宮内庁と堺市の共同発掘調査が始まった (c)朝日新聞社
大山古墳南西上空から。2018年10月下旬、外提部分で宮内庁と堺市の共同発掘調査が始まった (c)朝日新聞社

 日本にある世界最大級の遺跡といえば、大山(だいせん)古墳(現、仁徳天皇陵)。大山古墳を含む「百舌鳥(もず)・古市(ふるいち)古墳群」は来年にも世界文化遺産に登録される可能性が指摘されていますが、そんななか、2018年10月に宮内庁と堺市が共同で大山古墳の発掘調査を行うと発表。研究者、古代史ファンの注目が集まっています。

【箸墓古墳の立ち入り観察の様子はこちら】

 しかし、そもそも、陵墓とは? 大山古墳はなぜ仁徳天皇陵とよばれるのか? など、疑問点も多々あります。そんな問いに答えてきたのが朝日新聞奈良版連載「天皇陵古墳を歩く」(2016年4月~2018年3月)でした。天皇陵古墳を取材してきた記者が、近年進む研究者への天皇陵公開立ち入り調査時の様子や、記者自身が行った箸墓古墳についての情報公開請求の貴重なエピソードを紹介します。

*  *  *

■天皇陵古墳とは?

 日本最古の大型前方後円墳とされる奈良県桜井市の箸墓(はしはか)古墳は、中国の歴史書に記録された倭(わ)の女王・卑弥呼の墓という説もある重要な古墳です。古墳時代の幕開けを告げる箸墓古墳は、古代国家成立の鍵を握っているとも言えるのですが、宮内庁が「陵墓」として管理しているため、研究者であっても立ち入ることを禁じられています。そんなベールに包まれた天皇陵古墳の謎に迫ろうしてきた、ある研究者がいます。連載「天皇陵古墳を歩く」の筆者・今尾文昭さんです。

 陵墓とは天皇、皇后をはじめとする皇族のお墓のことです。宮内庁が管理と祭祀を行います。原則非公開で、たとえ研究や調査の目的であっても、自由に立ち入ることは禁じられています。考古学ではこうした陵墓を「天皇陵古墳」とよんできました。

■研究者の粘り強い交渉で天皇陵への立ち入りが認められるようになった

 今尾さんは、全国有数の考古学専門の研究機関として知られる奈良県立橿原考古学研究所(橿考研)の研究員として長年勤務し、現在は大阪の関西大学で非常勤講師として教壇に立ちます。天皇陵古墳研究の第一人者で、宮内庁が採集した資料報告や周辺で行われた発掘調査の成果、文献史料や絵図などを駆使して研究を進めてきました。研究者が陵墓に立ち入って墳丘を観察することができるように、研究者仲間と一緒に宮内庁と交渉を続けてきました。

 地道な努力が実り、宮内庁が内部規則を変更し、2008年2月、考古学や歴史学などの10以上の学会の代表者たちが、宮内庁の許可を得て、初めて天皇陵古墳に立ち入ることができました。それ以降、今尾さんも箸墓古墳や野口王墓古墳(奈良県明日香村、現、天武・持統天皇陵)など10カ所余りの天皇陵古墳に入って観察してきました。

次のページ
情報公開請求でわかった箸墓古墳墳丘の様子