■「今はまだブレイクじゃない」 渡辺謙と考えたテーマは“怒り”

 通常、CMといえば広告会社のクリエイターがアイデアを持ち寄り、キャスティングから演出までを手掛けている。しかし、ハズキルーペは少し異なり、松村会長がすべてのハンドルを握る。また、CM中にはキャストの意見も取り入れられている。世の中の文字の小ささに怒るシーンは演じる渡辺謙自らが「怒り」をテーマにして提案してきたという。

「『僕だったらこういうCMを作りたいというのを書いたから見てください』とアイデアを渡辺謙さんが箇条書きにして送ってくれました。普通ありえないでしょう。ここまでCMに本気で打ち込んでくれる俳優はいません」と松村会長は語る。実際、あまりにも本気で怒りをあらわにする渡辺謙の姿は何度見ても衝撃的だ。

 “パロディCM”で自社広告を超えて話題となっているが、来年4月以降のCMも動き始め、「次はもっと面白い」と自信満々。「すでにキャスティングも決まっていて、一番当たるんじゃないかって映像監督とも言っています。一人で考えるのはダメだから、色々と意見を聞きながら作っています。アイデアを伝えたら、『奇想天外だ』って言われましたよ」

 これ以上、まだ話題をさらうつもりなのか。

「まだまだブレイクしていません。やっと階段を1段上ったくらいですね」

 キャスティングの豪華さに加え、同社は週に43番組のメインスポンサーも務めている。当然かかる費用も膨大で、直近2年で100億かけたと松村会長。さらに、今後100億を使う予定だとも明かす。

「ハズキルーペは自分の店を持っていません。なので、各店で売り場を作りたいと思ってもらわなければいけない。CMを打つことでお客さんがハズキルーペを求めて店舗にやってくるので、取り扱い店舗数は増えて4万6千店舗以上がハズキを置いてくれています。メガネ店はもちろん、百貨店やホームセンター、書店、最近では美容室でも取り扱うところが増えてきました」(松村会長)

(AERA dot. 編集部・福井しほ)

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福井しほ

福井しほ

大阪生まれ、大阪育ち。

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