「物語をもっていそうな人たちにお願いしたものの、僕が想像していた内容を越えていて、ちょっとびっくりしました」(松任谷)
薬師丸ひろ子は20歳のときに一度女優引退を決めていた。その時期に観て再出発を決めたユーミンのコンサートがあった。aikoはこの世を去った従兄とユーミンの「ひこうき雲」との思いを打ち明けている。ユーミンと松任谷のつくってきたショーがオーディエンスの脳内で別の物語として実を結んでいることをはっきりと示している。
「僕自身、1975年、20代のときに日本武道館で観たスリー・ドッグ・ナイトのコンサートが自分の人生に影響するほどの体験でした。彼らのステージはすごくポップなヒットソングをロックのテイストにして、さらにショーアップされていてショッキングでした。あれを観たから、由実さんのステージもエンタテインメント性の高いものを考えた。40年以上経った今回のツアーにも、スリー・ドッグ・ナイトのテイストは盛り込んでいます」(松任谷)
盛岡公演からおよそ2週間後、ツアー2都市目の神戸のワールド記念ホールを訪れると、開演前のステージはリハーサル中だった。音楽、動き、照明の調整が入念に行われていた。そして本番。ユーミンをはじめミュージシャンやパフォーマーたちの動きはツアー初日よりも明らかにキレを増していた。終演後には出演者やスタッフが1室に集まり、松任谷を中心に反省会を行う。そこでも細部の修正を確認し合う。こうして2019年4月のファイナルまで、ショーはアリーナに生息する巨大な生き物であるかのように進化していく。
「ツアースケジュールにはもっともっと大きなアリーナがあります。客席数の多い会場のフリフラの光がステージ上から見たらどんな景色なのか、私自身も楽しみです」(ユーミン)
(神舘和典)